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第101回秦野物理サークル

                                 2010.11.22.発行
第101回秦野物理サークル報告

日時:2010年9月25日(土)14:00〜16:55
場所:伊勢原子ども科学館
参加者:久保田信夫(立花学園)、倉田慎一(教育センター)、志村潤子((株)ナリカ)、鈴木孝雄(一般)、塚本栄世(伊勢原高校)、深津貴志(伊勢原子ども科学館)
                                  計7名

【1】発表項目
(1)机の上にアルミ缶を斜めに立てる(鈴木孝雄)...図1、図2、写真1、写真2参照
(2)超小型オッシロスコープの紹介(久保田信夫)...写真3、写真4参照
(3)デジタル容量計を用いた放射線計測の試み(久保田信夫)...写真5〜写真7参照
(4)パーティーグッズを用いた「右手の法則」の説明(倉田慎一)...写真8、写真9参照
(5)「Zee Beez」の紹介(倉田慎一)...写真10〜写真13参照
(6)割れにくいシャボン玉...写真14〜写真17参照
(7)「キューリー夫人」のDVBの紹介...写真18〜写真21参照
(8)DVD-Rを用いた簡易分光器の製作(追試)〜DVD-Rの切断方法(塚本栄世)
   ...写真22〜写真27参照
(9)クーロンメーターの製作(追試)(塚本栄世)...写真28、写真29参照

【2】発表内容
(1)机の上にアルミ缶を斜めに立てる(鈴木孝雄)...図1、図2、写真1、写真2参照
 カラにした350mLのビールのアルミ缶を斜めにして机の上に立てようとしても、バランスがとれないため、立たせることはできません。ところが、適当な量の水を中に入れると、不思議なことに(写真1)のように安定して机の上に斜めに(約30°傾いた状態)立ちます!ちょっと不思議な感じです。(図1)のように、水を入れたアルミ缶全体の重心のx座標がアルミ缶と机との接触面ABの間にあれば、アルミ缶が斜めの状態であっても当然机の上に立つはずです。しかし、そのような解釈とは全く別の次元で、感覚的に不思議なのです。初めて見た人は思わず「エーッ、何で?」と言いながら、「あり得ない!」と思ってしまいます。
 例会では、まずカラにしたアルミ缶を斜めにして机の上に立てようとしてみましたが、立てることができないことを確かめました。次に、アルミ缶の中に少しずつ水を入れ机の上に斜めに立てるということを繰り返していくと、水をある量まで入れたときに斜めに立てることができるようになります。最終的に250mLまで水を入れてみましたが、安定して立たせることができました。まだ開けていないアルミ缶(ビールが目一杯入った状態)は斜めに立てることができませんので、中に入れる水の量を増やしていけばやがては必ず斜めに立てることができなくなるはずですが、机の上に大量の水をこぼすことになるので、そこまで試すことはしませんでした。また、透明なガラス瓶でも中に水を入れた状態で斜めに立てることができるものが紹介されました(写真2参照)。
 ところで、アルミ缶を斜めに立てることができるのはアルミ缶の下部に絞りを入れてある(どのメーカーのアルミ缶でも同じか?)からですが、このような絞りを入れる理由はなぜなのか?アルミ缶に強度を持たせるために必要があるのかもしれませんが、現時点では不明です。
 上記の内容はある本に載っていた写真で知ったことだそうですが、同じ本に以下の内容も紹介されていたそうです。市販されている1[L](リットル)の牛乳パックの牛乳が入る部分の外側の寸法は7cm×7cm×19cmです。従って、この牛乳パックの断面の形状が正方形であるとすると、その体積は931cm3となり、1[L](1000cm3)に達しません。ところが、実際に牛乳パックの中に入っている牛乳の量を測ってみると1[L](1000cm3)ぴったりだそうです。なぜこのようなことが起きるかというと、牛乳パックが牛乳の圧力で膨らんで断面の形状が変わるからだそうです。ちなみに、牛乳パックの断面の形状が牛乳の圧力で膨らんで円になったとすると(ただし、断面の周囲の長さは変化しないものとする)、円の断面積は正方形の面積の1.27倍になります(図2参照)。牛乳パックの形の中にもこんな仕組みが隠されているとは知りませんでした。
(2)超小型オッシロスコープの紹介(久保田信夫)...写真3、写真4参照
 秋月電子商会から5,800円で販売されている超小型のオッシロスコープ「VCDオシロスコープキット(SMD実装済)06202KP」(メーカーはJYE TECH)(写真3参照)が紹介されました。表面実装用の電子部品を使用することで小型化を実現したものですが、素人にはハンダ付けが難しい表面実装用の電子部品等はすでにハンダ付けが終了した形でキットとして販売されています。特性表によれば、「グラフィック液晶モジュールを使った携帯型オッシロスコープ・キット サンプリング周波数5MHZ 分解能8ビット アナログ周波数帯域1MHZ 垂直感度100mV/div〜5V/div 入力抵抗1MΩ 最大入力50VP-P 電源はDC9V、280mA程度 全体の重量108g」です。この製品の魅力は何といってもその価格です。オッシロスコープが1万円以下で買えるというのは驚きです。また、OKボタンを押すことで信号波形を簡単に静止させることができる(もう一度押すと再度波形が動き始めます)機能があります。ただ、画面が少し見づらい(黄緑色の背景に緑色の波形が表示されます)のが欠点です。また、このオッシロスコープの出力を直接パソコンに入力する機能がない(取り扱い説明書には「表示されている画面をパソコンに転送するためには、MAX232などを用いて本キットの出力信号(TTLレベル)をRS-232規格のレベルに変換する必要があります。」と書かれています)のは残念です。
 例会では、オッシロスコープの画面をノートパソコンについているカメラで撮影しながらその映像を液晶プロジェクターで黒板に拡大表示(液晶プロジェクターの「黒板モード」を使用)する方法(写真4参照)で使用しました。
(3)デジタル容量計を用いた放射線計測の試み(久保田信夫)...写真5〜写真7参照
 秋月電子商会から950円で販売されているデジタル容量計06001(写真5参照)を用いた放射線計測の試みが紹介されました。このデジタル容量計はコンデンサーの電気容量をデジタル表示することができますが、電気容量の測定範囲が1[pF]〜500[μF]であり、「ゼロ調整ボタン」を押すとその瞬間の電気容量を0[F]として、その後の電気容量の変化を表示することができる機能がついています。このデジタル容量計に手作りコンデンサー(写真6参照)を接続して放射線を計測しようという試みです。手作りコンデンサーは20cm×30cm程度の面積で厚さ1mmの長方形のアルミ板2枚を厚さ3mmのスペーサーを挟んでコンデンサーとし、さらにこのコンデンサー2個を並列接続して作ります。このコンデンサーの極板間にウラン鉱石の小片を綿棒の先端につけたもの(写真7参照)を挿入すると、そのウラン鉱石から放射されたアルファ線によって極板間の空気が電離されコンデンサーの電気容量が変化するので、デジタル容量計の表示値の変化から放射線の測定ができるはずとのこと。現時点ではこの測定は成功していませんが、その原因を検討している段階です。
 計算によればアルファ線1個によって1.02×10−13[C]の電荷が発生するので、極板間の電圧が1[V]であるとすれば0.1[pF]程度の電気容量の変化を測定することができれば放射線の計測ができるはずであると考えられます。ただ、実際に測定するとノイズが大きく、デジタル容量計の表示する値が時間とともに変化してしまい、放射線を計測することは難しいのが現実です。ノイズの原因として考えられるものとして、エアコンやパソコンのハム等を疑ってみましたが、今のところノイズの原因は分かっていません。
(4)パーティーグッズを用いた「右手の法則」の説明...写真8、写真9参照
 コイルに流れる電流の向きとその電流によって軸方向に生じる磁場の向きについて説明する際、コイルに流れる電流の向きに右手の親指以外の4本の指の向き(指の付け根から指先に向けて)をあわせると、右手の親指の向き(指の付け根から指先に向けて)に磁場が生じる関係になることを指摘します。このことを一度意識すると、電流が流れているコイルに生じる磁場の向きがどうなるかを右手を使ってすぐに判断することができるようになります。この関係について説明する際に使える、ユーモラスなパーティーグッズが紹介されました。それは、黄色の右手に棒がついているだけのものですが、おそらくパーティーを盛り上げる小道具として役立つのでしょう。硬くなりがちな物理の授業の中でこのような小道具を使って生徒の緊張をやわらげ、ほんの一瞬「フッ」と息を抜く瞬間があるのもいいですね。
(5)「Zee Beez」の紹介(倉田慎一)...写真10〜写真13参照
 「Zee Beez」はベレー帽のような形をした円盤状のプラスチック製のオモチャ(写真10、写真11参照)で、凹んだ面を下にしてそっと落とすと(自由落下させると)、床に落下した瞬間に形が変わり(上に凹む)、バネのはたらきで高く跳ね上がります。実際にやってみると、1.5mの高さから落下させると、床に衝突した後、約1.8mの高さまで跳ね上がります。落下したときの  の形が床に衝突した直後に  の形に変わるときに床を強く押すので、床から上向きに力を受けて高く跳び上がります。弾性エネルギーの例として物理の授業に使えるのではないかとのことで、紹介されました。なお、このオモチャはソニープラザで500円で販売されていたそうです。
 説明書には、「Zee Beez spin,pop,catch! バウンドすると不思議楽しさ」「1.ジービーズを親指で裏返して下さい。 2.裏返した後、ポスト(黄色部分)を親指と人差し指で持って下さい。手をまっすぐにして、ジービーズを回して落して下さい!(中央部のつまみを回転させながら落とすのは、姿勢を安定させるためと考えられます。)」「本体素材 合成ゴム、PVC、TPR」「MADE IN CHINA」と書かれています(写真12、写真13参照)。
 20年程前、これとよく似た金属製のオモチャが流行ったことがありました。ベレー帽のように中央部が凹んだ円盤状の円板を裏返して机の上に置くと、しばらくして元の形に戻るときに高く跳ね上がるものでした。今回紹介されたオモチャは原理は同じですが、金属製ではなくプラスチック製で、床に衝突してからすぐに高く跳ね上がるという違いがあります。
(6)割れにくいシャボン玉...写真14〜写真17参照
 「ドンキホーテ」という店で300円で販売されていた「割れにくいシャボン玉」が紹介されました。長さ6cm、直径2cm程度の円筒形のプラスチック製容器の中にシャボン液が入っています。容器の外側には、「さわれる! われない!! シャボン玉」「ちょっとまってから、さわってみてね!!」「のめません」と書かれています(写真14参照)。フタの部分には直径1cm程度の円形の輪がついていて、この輪についたシャボン液を輪に垂直方向から息で吹くと、直径1〜2cm程度のシャボン玉が多数空中に飛び出します(写真15参照)。このシャボン玉は手のひらで受け止めても割れません。また、このシャボン玉にティッシュペーパーでこすった塩ビ・パイプを近づけると、静電気で引き付けられてすぐくっついてしまいます(写真16参照)。
 このシャボン液は接着剤のようなにおい(酢酸ビニール系接着剤?)がして、シャボン玉の表面から揮発性の成分が蒸発しているものと思われます。机の上にくっついたシャボン玉にティッシュペーパーでこすった塩ビ・パイプを近づけると、シャボン玉が塩ビ・パイプに引っ張られた状態に変形し、そのままの形で固まってしまいます(写真17参照)。シャボン液の容器には、シャボン液の物質名や成分が書かれていません。また、このシャボン玉は白色に見えて、普通のシャボン玉のように七色に色づくことがありません。従って、かなり厚いプラスチック製の膜になっていると思われます。
(7)「キューリー夫人」のDVBの紹介...写真18〜写真21参照
 前回の例会で、キューリー夫人がラジウムから放射される放射線を測定する測定装置が話題になりました。この測定装置を使って放射線を測定する場面が出てくる「キューリー夫人」のDVD(写真18参照)がみつかったということで、そのDVDが紹介されました。このDVDは1943年に公開されたもので、本屋ではみつからずインターネットのアマゾンでようやく入手できたとのこと。光テコを利用して放射線を測定する場面(写真19参照)も出てきますし、長時間かけて精製(写真20参照)した残留物が残っているはずの蒸発皿の中には肉眼では何も残っていないように見える(写真21参照)ため、キューリー夫人が落胆して帰宅し、その後諦めきれず夜中に研究室に来てみると、研究室の窓全体がラジウムから放射される光によって光り輝いている感動的な場面があり、非常に印象的です。
(8)DVD-Rを用いた簡易分光器の製作(追試)〜DVD-Rの切断方法(塚本栄世)
   ...写真22〜写真27参照
 第99回例会(2010.5.22.)および第100回例会(2010.7.24.)で話題になった「DVD-Rを用いた簡易分光器」の続報です。DVD-Rを反射型回折格子として利用した簡易分光器は、光を取り入れるスリットの部分にメンディングテープ(少し白く濁った色のテープ)やトレーシングペーパーを貼り付けることによって白色光を散乱させ(つまり、この部分が白色光を放射する光源のはたらきをする)、可視光の連続スペクトル全体を見ることができる(写真22参照)ように工夫されています。
 ところで、DVD-Rはポリカーボネートの円板2枚を貼り合わせた構造ですが、このDVD-Rを反射型回折格子として用いた簡易分光器を製作しようとして、DVD-Rをハサミやカッター等で中心角30°程度に切断しようとすると、円板2枚がはがれてきてしまい、うまくいきません。DVD-Rを反射型回折格子として使った簡易分光器はスペクトルが大きく見えてなかなかの迫力なのですが、DVD-Rを中心角30°程度にうまく切断することができないことがネックになっていました。
 試行錯誤の末、ハンダごての熱で融かしながらDVD-Rを切断することができるかもしれないと思いつきました。ハンダごてを使って試してみようとしたときに、プラスチックを熱で融かしながら切断する工具(写真23参照)があることを思い出し、その工具を使ってDVD-Rを熱で融かしながら切断してみると、実に簡単に切断することができます。ポリカーボネートの円板2枚がはがれてしまうこともありません。切断すると同時に熱で融着することになるようです。
 ただ、熱で切断した部分には上下方向に融けたポリカーボネートが盛り上がってしまいます。
普通、簡易分光器を作る場合には、反射型回折格子を箱の内側の底の部分に貼り付ける訳ですが、熱で切断した部分に融けたポリカーボネートが盛り上がっているため、そのような使い方ができません。この邪魔な部分を爪切り等で切り取ると、その衝撃で2枚のポリカーボネートの円板がはがれてしまいます。そこで、この部分を無理に取ろうとせず、そのままにしておいて、裏側に両面テープでペットボトルのフタをくっつけ(写真24参照)、このフタを簡易分光器の箱の中に固定するようにしました。実際には、ペットボトルのフタの直径方向にドリルで穴を開け、その穴にアルミ棒を接着してから、簡易分光器の箱(今回は小さい段ボール箱を使用)の中に取り付けるようにしました。このようにすると、箱の外に出ているアルミ棒を手で回すことができ(写真25参照)、入射光と反射型回折格子の角度を変えることができるので便利です。
 例会では、試験管に水を一杯に入れてからゴム栓をしたもの(円柱レンズとしてはたらく)を光が入射するスリットのすぐ上に置くと(写真26参照)、光を集めるはたらきがあるため観察されるスペクトルが明るくなるとの指摘があり、実際にやってみたところ、部屋の天井に取り付けてある蛍光灯のスペクトルがはっきり見えました。その場にたまたまあった((9)のクーロンメーターの製作で帯電棒として使用するもの)直径5mmの透明アクリル棒を使ってみたところ(写真27参照)、天井の蛍光灯のスペクトルがさらに鮮やかに見えました。
 今後さらに工夫を重ねていくために考えられることとして以下のようなことが考えられます。
@簡易分光器の箱として段ボール箱ではなく、裏が黒い工作用紙を使用し、また、アルミ棒は竹串にして、安価でだれにでも簡単に作れるようにする。
A入射光を取り入れるスリットの外側に透明アクリル棒を固定し、光のスペクトルが明るく見えるようにする。
B赤色、青色、緑色、黄色などのセロハンを光が入射するスリットの外側に取り付け、各種色フィルターを透過した光のスペクトルを観察することができるようにする。
CDVD-R、CD-Rを中心角15°程度の扇形に切り、二つを並べて簡易分光器の箱の中に固定して、両者のスペクトルを比較することができるようにする。
D光の波長を測定することができるように工夫する。
Eモノクロメーターを製作する。
(9)クーロンメーターの製作(追試)(塚本栄世)...写真28、写真29参照
 「よせなべ物理 NO.289 2009.9.13.」の中で紹介されていた「デジタルクーロンメーターの製作 上尾橘高校 青木光男」をそっくりそのまま真似てクーロンメーターを作ってみました。秋月電子通商から1,000円で販売されているLCDデジタルパネルメーターPM-128(写真28参照)に電気容量100μFのコンデンサー、100Ωの抵抗、006Pの乾電池(電圧は9V)、スイッチ2個、電荷をためるための金属板を取り付ければでき上がりです。
 例会では、時間がなくなっていたため、ティッシュペーパーで摩擦して+に帯電させた透明アクリル棒や−に帯電させた塩ビ・パイプをデジタルクーロンメーターに取り付けた金属板に近づけることでパネルに表示される電気量がそれぞれ+33.5[nC](写真29参照)、-34[nC]を示し、電荷のプラス、マイナスを正しく測ることができる程度しか確認できませんでした。デジタルクーロンメーターのアースをしっかりとらなかったためか、0点が変動してしまい、正確な測定ができるかどうかの検討をすることができませんでした。できれば、次回例会で再度測定してみたいと思います。

【3】会費について
今年度は会費を集めません。

【4】連絡先について
〒259−1142 神奈川県伊勢原市田中1008−3
神奈川県立伊勢原高等学校 塚本栄世
TEL:0463−95−2578    
FAX:0463−96−2558    

【5】次回例会(第102回秦野物理サークル)について
 11月27日(土)14:00〜17:00 伊勢原子ども科学館
なお、今年度の例会の日程は以下の通りです。
・1月22日(土) 第103回例会 14:00〜17:00
・3月26日(土) 第104回例会 14:00〜17:00
例会の会場はいずれも伊勢原子ども科学館です。
    文責 塚本栄世






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