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第103回秦野物理サークル
                                 2011.3.21.発行
第103回秦野物理サークル報告

日時:2011年1月22日(土)14:00〜17:00
場所:伊勢原子ども科学館
参加者:稲葉一弘(伊勢原子ども科学館)、岩瀬充璋(神奈川大学)、倉田慎一(教育センター)、志村潤子((株)ナリカ)、鈴木孝雄(一般)、塚本栄世(伊勢原高校)、茂泉俊夫(綾瀬西高校)
                                  計7名

【1】発表項目
(1)物質の混合(倉田慎一)...写真1〜写真3参照
(2)Ag+の検出(倉田慎一)...写真4、写真5参照
(3)無重量状態を示す実験(稲葉一弘)...写真6参照
(4)数字を読み取る科学マジック(稲葉一弘)...写真7〜写真13参照
(5)「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」(茂泉俊夫)...写真14、写真15参照
(6)虹について(鈴木孝雄)...図1、図2、写真16、写真17参照
(7)ガラスコップがころがる往復運動の周期測定(塚本栄世)...写真18参照
(8)006−Pを電源としたイオンの移動を色の変化で示す実験(塚本栄世)
   ...写真19〜写真21参照
(9)簡易分光器の反射型回折格子としてのBD、DVD、CDの比較(塚本栄世)
   ...資料1、写真22〜写真25参照

【2】発表内容
(1)物質の混合(倉田慎一)...写真1〜写真3参照
 「物質の混合」の実験に使用された市販の玩具は、直径5〜6cm程度の透明なプラスチック球殻2個を長さ5cm、直径7〜8mm程度の透明プラスチック・パイプでつないだ構造で、その中には直径5mm程度のオレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球が多数入っています(写真1参照)。遊び方は、玩具全体を揺さぶったり傾けたりしながら根気よくオレンジ色の球と青色の球を2個の球殻の間で移動させて、片側に同じ色の球を寄せてしまうという遊びです(例えば、左側の球殻にオレンジ色の球、右側の球殻に青色の球を集めます)。もちろん、意識的に操作しないで、全体を乱雑にゆすったり傾けたりするだけではどちらの球殻にもオレンジ色の球と青色の球が混ざって入ります。つまり、コーヒーと牛乳を混ぜてコーヒー牛乳をつくると、そのコーヒーと牛乳がいつの間にか元のコーヒーと牛乳に分かれてしまうという現象が起きないのと同じです。エントロピー増大の原理から言って、エントロピーが大きいコーヒーと牛乳が混ざった状態の方がエントロピーが小さいコーヒーと牛乳に分かれた状態より実現される確率が圧倒的に大きいということです。
 この玩具の球殻の1つにドリルで穴を開け、その穴から球殻の中に入っているオレンジ色の球と青色の球をいったん全部外に出してしまい、次に、オレンジ色の球2個と青色の球2個を球殻に開けた穴から入れてその穴をゴム栓で塞いでしまいます。つまり、オレンジ色の球2個と青色の球2個だけが入った新しい玩具ができ上がったことになります(写真2参照)。この玩具を片方の球殻以外の部分を布製の袋に入れて(写真3参照)、操作が作為的にならないように、中が見えないようにしてから、乱雑に揺らして袋の外に出ている球殻の中に2個の球が入ったときのオレンジ色の球と青色の球の組み合わせを測定します。計算をしてみるとすぐに分かりますが、1つの球殻に入る2個の球が同じ色になる確率は1/3になります。ところが、実際にやってみると、1つの球殻に入る2個の球が同じ色になる確率は1/5になったそうです。その原因はどうも静電気らしいのですが、実験を何度も繰り返すうちに、オレンジ色のプラスチック球どうしや青色のプラスチック球どうしの間では斥力がはたらき、オレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球との間では引力がはたらくようになるとのこと。このように帯電するのは、プラスチック製の透明球殻とオレンジ色や青色のプラスチック球との摩擦によって帯電するのか。オレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球との摩擦によって帯電するのかははっきりしないようです。プラスチック製の球殻やオレンジ色や青色のプラスチック球がどのような種類のプラスチックであるかが不明であり、オレンジ色や青色のプラスチック球に入っている添加物の違いによってオレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球の帯電の違いが生じている可能性もあるとのこと。
 今後、この実験は工夫次第でエントロピー増大の原理を体験するための貴重な実験に発展させることができるかもしれません。
(2)Ag+の検出(倉田慎一)...写真4、写真5参照
 トイレの掃除に使う銀イオンAg+の入ったティッシュペーパーのようなものが市販されています。そのパッケージには、「流せるトイレクリーナー アルコールと銀イオンのW除菌 30枚入」と書かれています(写真4参照)。これをAg+の検出に使えないかと思い、このペーパーを食塩水に浸してから発泡スチロール製の皿に入れ(写真5参照)、太陽光が当たる場所に放置しておくと、黒い小さなしみのようなものがポチポチと現れたとのことです。この黒い物質はトイレクリーナーに入っているAg+と食塩水の中に含まれるCl−が反応して塩化銀AgClとなり、さらにこのAgClから太陽光の中に含まれている紫外線の作用によって銀Agが遊離するために黒いしみが生じると考えられます。
 例会でも同じ実験を行ないましたが、室内であったためにAgClから銀Agが遊離する反応が起きなかったらしく、黒い小さなしみはできませんでした。後日、太陽の光が当たる場所で再度同じ実験をやってみたいものです。
(3)無重量状態を示す実験(稲葉一弘)...写真6参照
 関西にある科学サークルであるOnsen(Online Natural Science Education Network オンライン自然科学教育ネットワーク)の例会に参加した際に、教えてもらった実験の1つだそうです。長さ5cm、直径1.3cmのフタつきの透明なプラスチック製容器の中に空気の泡が1個だけ残るようにして水を入れ、フタを閉めます。この容器が目の前にくるように手で持って、そのままの状態で容器の中の泡に注目しながらジャンプします。ジャンプした人の体が空中にある間は一種の無重量状態になっているので水中の泡は一ヶ所にとどまったままです。エレベーターをぶら下げているロープを切断すると、エレベーターが地面に激突するまでの短い時間はエレベーター内部で一種の無重量状態が実現できるということと同じだと思われます。手軽に無重量状態を体験することができる実験です。
(4)数字を読み取る科学マジック(稲葉一弘)...写真7〜写真13参照
 この実験もOnsenの例会で教えてもらった実験だそうです。まず、お客さんに白い紙(パソコンのプリンター用紙でよい、この紙を「紙A」と名づける)を渡し、その紙に黒マジックで一桁の数字を書いてもらい、外から見えないようにすぐその場で二つ折りにした黒いラシャ紙にその紙を挟んでもらいます(写真7参照)。それを受け取ったマジシャンが、その上から文字を書くためのもう一枚の白い紙(この紙を「紙B」と名づける)を載せてから、自分の頭にかざして「念」を入れ(写真8参照)、紙Bと黒いラシャ紙を通して紙Aに書かれた数字を透視(?)しながら、その透視した数字の上から紙Bに黒マジックで数字を書きます(写真9参照)。この数字をお客さんに見せると自分が書いた数字とぴったり一致している(写真10参照)ので、びっくりします。このマジックを例会で初めて見せてもらったわれわれも、どのような仕組みでこんなことができるのか検討がつかず、びっくりしました。
 マジックは本来種明かしはしないものですが、例会では以下のようにすぐに種明かしをしてもらいました。ポイントはこのマジックに使う紙Bにあります。実は、紙Bは熱転写式のFAX用紙(写真11参照)で、黒マジックのインクから出る揮発性成分(この揮発性成分は黒いラシャ紙を通過します)によって紙Bに数字の形に薄い色がつきます(写真12、写真13参照)。この薄い色がついた部分を黒マジックでなぞれば数字を書くことになります。黒マジックでなぞるのは、紙Bに揮発性成分によって数字の形に薄い色がついていることを隠す意味もあります。このことを確かめるため、黒マジックをペン先を上にしてフタを取り、その上に紙Bを置いて色がつくかどうか試したところ、色がつくことはありませんでした。それに対して、紙Bの上にペン先を下にしてフタを取った黒マジックを近づけると、薄く色がつきました。(この結果から、揮発性成分は空気より比重が大きい物質であると考えられます。インターネットで調べた結果、揮発性成分は分子量106のキシレンC8H10等が含まれているようです。)また、紙Aに黒マジックで数字を書き、その直後に紙Bを押し当てると、数字の形にうすく色がつきますが、それに対して、黒マジックで数字を書いてから時間がたってしまうと紙Bを押し当てても数字の形にうすく色がつくことはありません。また、紙Bに表と裏があり、押し当てる面が逆のときはうまくいきません。
 なお、この科学マジックを考えた数学の先生はこのマジックの特許も取られたそうです。
(5)「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」(茂泉俊夫)...写真14、写真15参照
 年に2回実施している理科部会物理実験実習委員会主催の物理実験器具製作会で今後製作する予定の「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」が紹介されました。従来、科学まつり等のイベントで製作されていたプラコップ スピーカーは、透明なプラコップに太さ0.4mm程度のエナメル線を適当な回数(10〜20回程度か?)巻いた直径20mm程度の円形コイルをセロテープでプラコップの底(外側)に貼り付け、そのコイルをラジカセやCDプレイヤー等(ちょっと古いか?)の出力端子に接続してボリウムを最大にして音楽の信号を流し、コイルの近くにフェライト磁石を近づけると、コイルを貼り付けたプラコップが音楽にあわせて振動するため、プラコップから音楽が聞こえるというものでした。本来、コイルを作るためのエナメル線はできるだけ軽くまた電気抵抗が小さい方がよく、また磁石は磁力が強く、小型であることが理想です。ただ、安価で入手しやすい材料で製作することを考えると、なかなか感度のいい手作りスピーカーを作ることは難しいことでした。ところが、最近フェライト磁石に比べて格段に強烈なネオジム磁石の値段が下がり、100円ショップで直径5mm程度のネオジム磁石が4個100円で入手できるようになり、この磁石を使うことでプラコップ スピーカーの感度がかなりよくなりました(写真14参照)。
 今回紹介された「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」では、さらにコイルを直径0.12mmという非常に細いエナメル線を使うことによって従来のものに比べて格段に軽量化しています(写真15参照)。従って、感度が抜群によい「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」が誕生しました。ただ、エナメル線が細いために電気抵抗が大きく、そのことが悪さをするのか、コイルの巻数を余り多くするとかえって感度が下がるそうで、コイルの巻数の最適値は15回だそうです。なお、直径0.12mmエナメル線は1kgあたり4,200円と高いのが難点です。プラコップ スピーカーを多数製作するのでなければ、何校かが共同でこのエナメル線を入手するとよさそうです。
 なお、例会ではこのような細いエナメル線は時計のムーブメントの部分に大量に使われているとの指摘がありました。そのような時計が廃棄されることがあれば、細いエナメル線をタダで手に入れるチャンスです。「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」を例会でも製作してみたいものです。

(6)虹について(鈴木孝雄)...図1、図2、写真16、写真17参照
 まず、虹が生じる仕組みを振り返ってみましょう。(図1)のようにA点で水滴に入射した太陽光が水滴と空気の境界面で屈折し、次にB点で水滴から水滴の裏側の空気中に光のエネルギーの大部分が出ていく際、一部の光のエネルギーが反射し、C点で水滴から空気中に光が出ていくときに再度屈折します。A点とC点(つまり、水滴と空気の境界面)で光が屈折するときには光の波長によって屈折率が異なる「光の分散」の現象が起きるため、光の波長によって屈折角がわずかずつ異なります。光の波長が異なると光の色が異なるため、C点で水滴から空気中へ出ていく光の角度が光の色によって違ってきます。そのため、水滴から観測者に向かう光が角度によって異なる色に色づいて見え、外側から順に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と七色(実際には連続スペクトル)に色づく虹の現象が観察されます。このとき、水滴への入射光と水滴で屈折→反射→屈折を起こして観測者に向かう光のなす角度θは光の波長によって異なりますが、ほぼ41°であり、この角度θは水滴の大きさに無関係です。この性質に注目して、身近な材料を使って虹を観察する工夫が紹介されました。
 そのポイントは、水滴の役割をするものとして、断面の形が円形であるペットボトル(発泡性飲料用)を使用したことです。虹の原理を実験によって理解することに目的を絞れば、水滴の役割をするものは球形である必要はなく、光の屈折率が空気より大きい円柱形の物体であっても構いません。具体的な方法は、(図2)のように、太陽光の役割をするクリア電球と水を入れたペットボトルを配置します(写真16参照)。このとき、ペットボトルは鉛直にして目の前に立てた状態で使用します。ペットボトルの光を入射させた側と反対側の端を見ると、その位置に水平方向に色が変化する連続スペクトルが見えます。ただし、スクリーンを使わなければ、観察する角度によって色の異なる単色光を観察することになりますが、乳白色のビニール袋をこの位置に置くと、このビニール袋がスクリーンの役割をして連続スペクトル全体が観察されます(写真17参照)。このとき、ペットボトルに光が入射するA点付近にものを置いて光を遮ると、連続スペクトルは消えてしまいます。なお、太陽光の役割をする光源としてクリア電球(電球の外側のガラス部分が乳白色のすりガラスではなく、透明ガラスが使用されていて、外からフィラメントが直接見えるタイプのもの)を使用しています。光源のフィラメントは点光源とみなせるような小さいものが理想ですが、このクリア電球のフィラメントはかなり小さいので、実用上は問題がありません。
(7)ガラスコップがころがる往復運動の周期測定(塚本栄世)...写真18参照
前回の例会で紹介された「ころがる(鈴木孝雄)」の追試です。ガラスコップ(直径  cm、高さ  cm、質量  g)を横にして側面が接するように机の上に置き、そっところがすと、30〜40cmころがった後、一瞬静止してから逆向きに引き返してきて、再度一瞬静止してから元の運動の向きにころがり、...という往復運動が起きます。このころがりの往復運動は結構長い時間続き、振幅が小さくなりながら5〜6回以上往復運動します。なぜこのような往復運動が起きるのか、現時点では不明ですが、その仕組みを探るため、ガラスコップだけの場合とガラスコップの内側に質量 gのボルトを貼り付けた場合について、往復運動の振動周期を測定しました。その結果は、ガラスコップだけの場合は4.0[s]、ガラスコップの内側にボルトを貼り付けた場合は2.4[s]でした。
 前回の例会でも指摘されていたように、厚さおよび材質が一様で断面が理想的な円形をしたパイプをころがせばこのような現象が起きるはずがなく、少しころがってから静止してしまうだろうと予想されます。また、ペットボトルを輪切りにしたものの内側に意図的に軽いおもりを貼り付けて机の上でころがすと、おもりを貼り付けてないものに比べて往復運動の周期が短くなる現象も前回の例会で紹介されており、従って、逆に考えると、対称性のいいものほど往復運動の周期が長くなると予想されます。今回は、ガラスコップとボルトを使って前回の例会で紹介された実験を追試した訳ですが、今後理論的な計算によってこの現象についての解析を進めていきたいものです。
(8)006−Pを電源としたイオンの移動を色の変化で示す実験(塚本栄世)
 ...写真19〜写真21参照
 まず、顕微鏡用のスライドガラスや超透明テープを二つ折りにしたものの上に青色リトマス試験紙を載せ、そのリトマス試験紙を飽和食塩水で濡らして電流が流れやすい状態にします。次に、そのリトマス試験紙の両端を目玉クリップで挟んでからリトマス試験紙の中央部にスポイトで酸を滴下し、リトマス試験紙の両端に電圧をかけると、酸に含まれる水素イオンH+の移動によって、青色リトマス試験紙が酸のはたらきでピンク色に変化する領域が徐々に−側に移動していく現象が起きます。実際にこの実験をやってみると、リトマス試験紙の両端を挟んでいる目玉クリップの間に何Vの電圧をかけるかが問題で、電圧が低い場合は時間がかかりすぎて授業時間内に色の変化を見せることができないと同時に、迫力不足です。やはり、見る見るうちに色が変わっていくようでないと実験の迫力がありません。つまり、電圧をかけるために使用する電源が問題で、できれば連続的に電圧を変えることができる電源が理想ですが、高校の現場では充分高い直流電圧(例えば、100V)を発生することができる直流電源はありません。そこで、市販されている006−P(9V)を直列接続して直流電源として使用して実験してみました。
 例会では、006−Pを10本直列接続(計90Vの電圧になる)し、0.1mol/Lの塩酸に浸した木綿糸をリトマス試験紙の中央部に長さ方向と直角方向に置くと、徐々に元の水色からピンク色に変色する領域が広がって行くのを観察する実験(写真19参照)を行いました。例会の2〜3日前に同様の実験を行なったときと比べ、リトマス試験紙が変色する速さが遅いので、0.2mol/Lの塩酸を使い、また、リトマス試験紙の中央部に置く酸の量を増やすために木綿糸の替わりにろ紙を幅2mm程度の短冊に切ったものを使用して同様の実験を行なった(写真20参照)ところ、リトマス試験紙の色が水色からピンク色に変色する速さが少し速くなりました。しかし、例会の2〜3日前に実験を行なったときと比べ、リトマス試験紙が変色する速さが遅いのは明らかで、何度も実験を繰り返すうちに006−Pの電圧が下がってきたのかもしれません。
 例会では、以下のような指摘がありました。
@電池の電圧が低下しないようにするために、回路には必ずスイッチを入れる必要がある。スイッチを押している間だけ回路に電流が流れるようにしないと、すぐ乾電池(006−P)の電圧が下がってしまう。
A青色リトマス試験紙の中央部に置く酸の濃度をもっと上げた方がよい。
B青色リトマス試験紙の中央部に置く酸を含んだ木綿糸は酸を含む量が少ないので、ろ紙を短冊に切ったものを使用した方がよい。
C観察する対象が小さいので、ビデオカメラと液晶プロジェクター等を利用して実験を拡大して見せる工夫が必要である。
D食塩水を浸したろ紙の上に過マンガン酸カリウムの結晶の小片を置いて、電圧をかける実験をやるとよい。





(9)簡易分光器の反射型回折格子としてのBD、DVD、CDの比較(塚本栄世)
 ...資料1、写真22〜写真25参照
 第101回例会(2010.9.25.(土)実施済)で紹介されたDVD−Rを熱で45°の角度に切ったものを反射型回折格子として使用した簡易分光器を裏が黒い工作用紙を使って3台製作し(写真22参照)、分光器の中に入れる反射型回折格子としてCD―Rを使用した場合、DVD−Rを使用した場合、BD(ブルーレイ・ディスク)を使用した場合の3通りの場合についてその観察されるスペクトルを比較しました。まず、CD―R、DVD−R、BDの情報を記録する面の外観を比較すると、(写真23)のように、BDは真っ黒です(写真では上から順にCD―R、DVD−R、BDです)。今回、裏が黒い工作用紙を使って製作した簡易分光器は幅6cm、高さ17cm、おくゆき23cmの直方体の箱で、箱の上面で後から8cmの位置に横幅3cmの単スリット(スリット幅は約1mm)を作り、その上から乳白色のトレーシングペーパーをセロテープで貼り付け、その真下に下から2.5cmの高さの位置に熱で中心角45°の角度に切ったDVD−R等を反射型回折格子として竹串を使って固定します。反射型回折格子を箱に固定する具体的な方法は、中心角45°の角度に切ったDVD−R等を両面テープでペットボトルのフタの上面に固定し、さらにそのペットボトルのフタの側面にドリルで穴を開けて、その穴に竹串を通します。この竹串を箱の内側から箱の外に向かって突き通すことで、DVD−R等で作った反射型回折格子を箱に固定し、さらに輪ゴムを箱の後ろ側を通して箱の両側に突き出した竹串に引っ掛けるようにして、輪ゴムと箱との摩擦によって反射型回折格子を任意の位置で固定することができるように工夫してあります。DVD−Rを反射型回折格子として使った簡易分光器で、箱の上部の単スリット(乳白色のトレーシングペーパーをその上に貼り付けてある)の上に電球型蛍光灯(Nationalパルックボール EFT14EDG、14W...白熱球60W相当の明るさ、三波長型昼光色、パルックday色、全光束750ルーメン)を置いて(写真24参照)、簡易分光器前面の覗き窓から反射型回折格子を見ると、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫色の連続スペクトルと何本かの線スペクトルが見えます(写真25参照)。このとき、竹串を持ってゆっくり回転させると、1次の回折光と2次の回折光の一部が見えます。それに対して、CD―Rを反射型回折格子として使用した場合は、1次、2次、3次の回折光が観察され、また、2次と3次の回折光の一部が重なっています(詳細は資料1参照)。さらに、BD(ブルーレイ・ディスク)を反射型回折格子として使用した場合は、回折光が一切観察されません。BDのトラックピッチが0.32μmであるため、(資料1)に示すように、可視光の範囲内では回折光が存在しません。つまり、肉眼で見ても真っ黒に見えるBDは可視光に対して反射型回折格子としてはたらかないようです。つまり、BDを使って簡易分光器を製作することはできません。従って、現時点ではDVD−Rを反射型回折格子として簡易分光器を作るのが一番いいようです。
【参考】CD、DVD、BDのトラックピッチ、データを記録するレーザー光の波長、データ容量の比較
@トラックピッチdの比較
 CD ... d=1.60μm(=1600nm)
 DVD ... d=0.74μm(=740nm)
 BD ... d=0.32μm(=320nm)
Aデータを記録するレーザー光の波長λの比較
 CD ... λ=780nm(赤外光)
 DVD ... λ=650nm(赤色光)
 BD ... λ=405nm(青色光 ... 紫色
 光?)
Bデータ容量mの比較
 CD ... m=0.7GB
 DVD ... m=4.7GB
 BD ... m=25GB(2層の場合は50G
 B)

【3】会費について
今年度は会費を集めません。

【4】連絡先について
〒259−1142 神奈川県伊勢原市田中1008−3
神奈川県立伊勢原高等学校 塚本栄世
TEL:0463−95−2578    
FAX:0463−96−2558    

【5】次回例会(第104回秦野物理サークル)について
3月26日(土) 14:00〜17:00
例会の会場は伊勢原子ども科学館です。
なお、来年度の例会日程は現時点では未定です。
    
                                  文責 塚本栄世



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