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静電気チェッカーの製作 |
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「静電気プラマイチェッカー」の製作
厚木西高等学校 塚本栄世
第17回物理実験器具製作会(2004.10.22.実施済)で製作した「静電気プラマイチェッカー」について紹介します。
【1】目的
静電気の実験において、帯電した物体の電荷の正負を簡単に判別するために使用する実験器具を製作する。
【2】準備するもの
@基板 1枚
...エッチングしてプリント基板を作ってもよいし、万
能基板を使用してもよい。
Aトランジスター 2SC1815 3個
B電子ブザー(3V用) 1個
EB4105A−30C150 580円
...今回は演示実験でプラマイチェッカーを使用するこ
とを想定して、特別大きな音を出す電子ブザーを使用
した。
...秋葉原駅前ラジオセンター内(2F)の「山長通商(株)」(TEL:03−3251−9691)にて購入。
C赤色LED 1個 ...足の長い方が+(図1参照)
C乾電池(単三、1.5V) 2個
D乾電池ホルダー(単三乾電池2個用) 1個
E006P電池スナップ 1個
F透明プラスチックケース 1個
Gボルト(3φ×10)とナット 各2個
H両面テープ(厚手タイプ) 少々
I塩化ビニール・パイプ(外径18φ、長さ25cm) 1本
Jアルミテープ(幅7.5cm、粘着剤付き)...長さ25cm程度
K5cm×10cm程度のプラスチック板
L赤色蓑虫クリップ 1個
M黒色蓑虫クリップ 1個
Nリード線(黒)...65cm程度の長さ
Oリード線(赤)...15cm程度の長さ
Pカーボン抵抗 47Ω
[参考]LEDの電流制限抵抗の計算について
今回使用するLEDの定格値は、2.1V、20mA(=0.020A)であるので、直流電源(3.0V)、LE
D、電流制限抵抗を含む閉回路についての(電源電圧)=(LEDにかかる電圧)+(電流制限抵抗にかかる電圧)
の式は電流制限抵抗をRとおくと、以下のようになる。
3.0=2.1+R×0.020 → R=45Ω
市販されているカーボン抵抗の中で45Ωに一番近いのは47Ωなので、47Ωの抵抗を使う。
【3】トランジスター 2SC1815について
・NPN型トランジスター
...エミッターはN型半導体、ベースはP型半導体、コレクターはN型半導体
・直流電流増幅率hFE: min 70 、 max 700
・VCE : 6V
・足は文字面から見て、左から順にエミッターE、コレクターC、ベースB
...(図2)参照
【4】実験装置の作り方および実験方法
...(図3)、(図4)参照 
@基板にトランジスター2SC1815 3個を((図3)、(図4)のようにハンダ付けする。
A基板の穴2、4に黒リード線をハンダ付けする。...穴4にハンダ付けする黒リード線は長さ50cm程度、穴2にハンダ付けする黒リード線は長さ15cm程度。
B穴4にハンダ付けした長さ50cm程度の黒リード線を透明プラスチックケースのふたに開けられた穴を通して引き出し、その先端部に黒色蓑虫クリップをハンダ付けする。
Cプラスチック板の表裏面にぐるっと回すようにアルミテープを貼りつけ(今後これをアルミ板と呼ぶ)、Bの黒色蓑虫クリップではさむ。
D電子ブザーをボルト(3φ×10)とナット各2組を使って、透明プラスチックケースのふたの上面に固定し、電子ブザーの端子にハンダ付けされている赤リード線および黒リード線をケースのふたに開けられた穴を通して内側に引き込む。
ELEDを透明プラスチックケースのふた上面の5φの穴に内側から差し込む。
F穴2にハンダ付けした黒リード線、47Ωの抵抗、LEDを(図4)のようにハンダ付けする。
G電子ブザーの黒リード線を穴3にハンダ付けする。
H電子ブザーの赤リード線をLEDの+側の足(長い方)にハンダ付けする。
ILEDの+側の足(長い方)に長さ15cm程度の赤リード線をハンダ付けし、他端を透明プラスチックケースのふたに開けられた穴を通して引き出し、ビニール被覆を取り除いてからハンダ付けして太くする。...この部分をスイッチとして使う。
J乾電池ホルダーに006P電池スナップを取り付け、電池スナップの赤リード線を透明プラスチックケースのふたに開けられた穴を通して外に引き出す。
K Jの赤リード線に赤色蓑虫クリップをハンダ付けする。
L電池スナップの黒リード線を穴1にハンダ付けする。
M乾電池ホルダーに単三乾電池2個を入れる。
【5】実験方法
@ 【4】Kの赤色蓑虫クリップでIの赤色リード線先端部をはさむ。(これでプラマイチェッカーの電源が入ったことになる。)
Aプラマイチェッカーのアルミ板に+に帯電した物体を近づけて離すと、近づけるときにはLEDが点灯すると同時に電子ブザーが鳴るが、遠ざけるときにはLEDが点灯せず、電子ブザーも鳴らない。
Bプラマイチェッカーのアルミ板に−に帯電した物体を近づけて離すと、近づけるときにはLEDが点灯せず、電子ブザーも鳴らないが、遠ざけるときにはLEDが点灯すると同時に電子ブザーが鳴る。
C電荷の正負が分からない帯電体をプラマイチェッカーのアルミ板に近づけて離すとき、A、Bのどちらの結果が出るかによって帯電体の電荷の正負が判定できる。
【6】プラマイチェッカーの原理
このプラマイチェッカーはNPN型トランジスター(2SC1815)3個を接続して入力電流を3段に増幅することにより、1段目のトランジスターのベースに流れるごくわずかな電流を大きく増幅して電子ブザーを鳴らしたり、LEDを点灯したりするものである。仮に、トランジスターの直流電流増幅率hFEが100であるとすると、入力電流を3段に増幅することにより100×100×100倍(=106倍=100万倍)の出力電流が得られることになる。従って、例えば、1段目のトランジスターのベース電流が10nA(=10×10−9A)であるとき、3段目のトランジスターのコレクター電流は10×10−9×106A(=10×10−3A=10mA)となり、電子ブザーを鳴らしたり、LEDを点灯したりすることができる電流のオーダーになる。
ところで、電子やホールの動きを元にプラマイチェッカーの作動原理を考えると、正に帯電した物体をアルミ板に近づけると、アルミ板の帯電物体に近い側に電子を引きつける(1段目のトランジスターのベースのホールの数が増える)ので1段目のトランジスターのベースに電流を流し込むことになり、3段のトランジスターによって次々と電流を増幅して最終的に電子ブザーを鳴らしたり、LEDを点灯したりすることになる。ところが、この正に帯電した物体をアルミ板から遠さける時は1段目のトランジスターのベースとエミッターのPN接合に逆電圧をかけることになるので電子ブザーを鳴らしたり、LEDを点灯したりすることはできない。それに対して、負に帯電した物体をアルミ板に近づけるとときは電子ブザーを鳴らしたり、LEDを点灯したりすることはできないが、負に帯電した物体をアルミ板から遠ざけるときは1段目のトランジスターのベースに電流を流し込むことになり、電子ブザーを鳴らしたり、LEDを点灯したりすることになる。
【7】その他の応用
このプラマイチェッカーは感度が非常によく、電荷の正負の判定に威力を発揮する。その他、工夫次第で以下のようないろいろな応用が考えられる。 (1)1段目のトランジスターのベースとコレクターを発泡スチロール板を間にはさんだ2枚の銅板に接続し、その2枚の銅板にまたがるようにティッシュペーパー、木材、たこ糸、人間の手、...等、高抵抗であっても微小電流を流すものを置くとブザーが鳴り、LEDが点灯する。ところが、各種プラスチック、ロウソク、...等の絶縁体を置くと、そのようなことは起きない。 (2) プラマイチェッカーに2個のLED(赤、青)を+、−逆に並列接続したものを製作し、正(負)に帯電した物体をアルミ板に近づけると、赤(青)色LEDが点灯する。 (3)2段増幅、4段増幅のプラマイチェッカーを製作する。
【8】参考文献
@「理科教室 1995 7月号」の「3段アンプ」(石井 信也)
A「理科教室 1996 6月号」の「3段アンプで広がる物質の世界」(石井 登志夫)
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