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連続スペクトルの一部をカットし、再合成する光の実験
1.申請内容の背景とねらい
【1】目的
 連続スペクトルの一部をカットし、再合成する光の実験によって光の色、および、波長の違いによる光の性質の違い等に関する一連の演示実験を行うこと。

【2】概要
 従来、光のスペクトルの観察は分光器を使って行なわれることが多かったが、この方法では生徒一人一人が交代で観察することになり、非常に能率が悪かった。また、色フィルターを次々代えながら光の吸収について説明するようなことはとてもできなかった。それに対して、スライドプロジェクターの白色光を単スリットを通して回折格子レプリカフィルムに入射させると、鮮明で大きな連続スペクトルを表示することができ、さらにそのスペクトルをフレネルレンズで集めることで光の再合成が可能となる。このような方法を使うと、授業の中で生徒全員が同じ光のスペクトルを同時に観察することができるので、印象深い光のスペクトルの実験を能率的に行なうことができる。また、2種類のスペクトルを同時に観察して、両者を比較しながら実験を進めていくことは重要なことであるが、回折格子レプリカフィルムによる左右の一次の回折光を使うとそのことを容易に実現できる。例えば、白色光を連続スペクトルに分解し、その一部をカットしてから再度混合することで、自由にいろいろな色の光をつくり出し、色フィルターによる光の吸収や、夕焼けがなぜ赤いか、青空がなぜ青いか、葉っぱはなぜ緑色か等の身近な色に関する生徒の疑問に答えると同時に、光の波長によって光の干渉や回折の現象にどのような差が出るかについて実験を通して答えることができる。




2.内容の説明
【1】教材・教具の製作方法について
1.製作に用いる材料

 回折格子レプリカフィルム((株)光洋、1mmあたり905本の溝)、フレネルレンズ(シートレンズU−5、A4サイズ、シンワ測定(株)、DIYの店で1,350円)、ホログラムシート(東急ハンズ、1mmあたり約200本の傷が直角方向につけられている回折格子シート)、裏が黒い工作用紙(クロワシ、4切)、色セロハン(赤、緑、青、黄)、スライドプロジェクター用のマウント、剃刀刃(0.1mm厚)、釣用の重り(コイン25号)、レーザーポイター(秋月電子通商、670nm、900円)
2.実験装置の製作
(1)スライドプロジェクター用のマウントに固定した単スリットの製作...写真1参照
 剃刀刃をペンチで割り、約1.2mmの隙間を開けてスライドプロジェクター用のマウントに黒のビニールテープで固定する。
(2)レーザーポインターを固定する台の製作...写真2参照
断面が25mm*40mm、長さ5cmの木の棒に木工ドリルを使って13.5φの貫通穴を開ける。この木片の左右から断面が30mm*40mm、長さ5cmの木の棒を木ネジで固定し、黒ペンキを塗って乾燥させてから、重り6個を両面テープで棒に貼りつける。この穴の中にレーザーポイターを挿入すると、レーザーポインター側面のボタンが押された状態になり、スイッチが押されたままになる。また、この台はスライドプロジェクターのレンズが下がらないように支持するはたらきもする。
(3)長方形の窓の開いた板を固定した冶具の製作...写真3参照
 スクリーン上の光のスポットの形を長方形にするために窓を開けた板をレンズの前の位置に固定するための冶具を製作する。写真3のように水ようかんの容器の底に適当な大きさの窓を開け、さらに縦28mm、横6mmの窓を開けた裏が黒い工作用紙を貼り付ける。この容器をL字金具を使って板に固定する。
(4)回折格子レプリカフィルムを固定した台の製作...写真4参照
厚さ3mmのベニヤ板を縦14cm、横10cmに切り、縦8.5cm、横6.0cmの窓を切り抜く。このベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ10cmの棒に固定する。さらに棒の裏側に縦14cm、横1.5cmのベニヤ板を木ネジで固定する。(このベニヤ板は直進する白色光を遮るはたらきをする。)次に、黒ペンキを塗って乾燥させ、窓の部分に回折格子レプリカフィルムをセロテープで固定する。(回折格子レプリカフィルムに刻まれた溝が縦になるように固定する。)最後に重り3個を両面テープで棒に貼りつける。
(5)フレネルレンズを固定した台の製作...写真5参照
厚さ3mmのベニヤ板を縦25cm、横32cmに切り、縦20cm、横27cmの窓を切り抜く。このベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ32cmの棒に固定する。次に、黒ペンキを塗って乾燥させ、窓の部分にフレネルレンズをセロテープで固定する。さらにその上から縦18cm、横24cmの窓を切り抜いた裏が黒い工作用紙(縦25cm、横32cm)をセロテープで固定する。次に、スペクトル観察用の板目紙2枚(縦4cm、横32cmのものと縦8cm、横32cmのもの)を工作用紙に貼り付ける。最後に重り3個を両面テープで棒に貼りつける。このようなものを2個製作する。
(6)スクリーンの製作...写真6参照
 表面に白ペンキを塗った縦26cm、横35cmのベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ35cmの棒に固定する。次に、重り3個を両面テープで棒に貼りつける。このようなものを2個製作する。
(7)焦点距離調節用のスクリーンの製作
 表面に白ペンキを塗った縦26cm、横17cmのベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ17cmの棒に固定する。次に、重り3個を両面テープで棒に貼りつける。
(8)スクリーン用の棒の製作...写真6参照
2個のスクリーンを置く位置の間隔が机の幅より少し大きいため、長さ1.4mの棒(断面は4cm*2.5cm)を使う。なお、棒の上には釣り用の重り5個を両面テープで貼りつける。
(9)実験装置の位置決め用の台紙の製作...写真7参照
白い大きな紙を実験台の上に置き、その上にスライドプロジェクター、レーザーポインター固定用の台、回折格子レプリカフィルムを固定した台、フレネルレンズを固定した台、スクリーン用の棒、スクリーンを正しい位置に置いて、その位置を紙の上に印をつけて記録する。また、分度器を拡大コピーしたものをその台紙の上に貼り、回折格子レプリカフィルムに入射した光の回折した角度および光の波長を示すために利用する。なお、回折した角度から光の波長を計算する際にはdsinθ=nλの式を使う。
(10)裏が黒い工作用紙を用いた各種の実験用台紙の製作...写真8参照
裏が黒い工作用紙をフレネルレンズを固定した台と同じ大きさ、形に切ったものを製作し、その工作用紙から光を通過させるための長方形の窓を切りとった各種の実験用台紙を製作する。
(11)各種フィルターの製作...写真9参照
 写真のように色セロハン、色の付いたプラスチック板、ゼラチンフィルター等の各種フィルターを作る。
 
【2】実験方法
1.実験前の調整
(1)スライドプロジェクターのスライダーにマウントに固定した単スリットを入れ、光が単スリットを通る状態にする。
(2)実験装置の位置決め用の台紙を実験台の上に置いて、セロテープで固定する。
(3)台紙につけた印に合わせてスライドプロジェクター、フレネルレンズを固定した台、スクリーン用の棒、スクリーンを正しい位置に置く。...写真10参照
(4)窓の開いた板を固定した冶具をスライドプロジェクターのレンズの前にセットする。(この冶具の板の部分をスライドプロジェクターの上に載せ、その上に重りを4個載せて固定する。)この冶具をつけないとスクリーン上の光のスポットにスライドプロジェクターのコイルの形が映ってしまうが、この冶具を付けることで、コイルの一部だけを見ることになり、スクリーン上の光のスポットが自然なものに見える。...写真11参照
(5)暗幕を閉めて、実験室を暗くする。
(6)スライドプロジェクターのスイッチを入れ、そのレンズを出し入れしてフレネルレンズと同じ距離で正面に置いた焦点距離調節用のスクリーンの上に単スリットの像が鮮明に映るようにする。この状態でピントがあっていることになる。
(7)レンズの下にレーザーポインター固定用の台を入れ、レンズが下がらないようにする。...写真11参照
(8)回折格子レプリカフィルムを固定した台を正しい位置に置く。...写真12参照
(9)左右のスクリーンの位置を微調整し、スクリーン上の光のスポットが白色になるようにする。
2.白色光を連続スペクトルに分解する実験...写真13参照
 スライドプロジェクターの白色光を単スリットを通して回折格子レプリカフィルムに垂直に入射させ、その一次の回折光をフレネルレンズを固定した台に映すと、赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化する非常にきれいな連続スペクトルが観察される。この連続スペクトルの光をフレネルレンズで集めると、スクリーン上に白色の光のスポットが観察される。つまり、白色光の中には赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化するいろいろな色の光が含まれていること、および、このいろいろな色の光を再度集めると元の白色光に戻ることが分かる。
3.白色光の連続スペクトルの一部をカットし、再合成する実験
(1)夕焼け、青空についての実験...写真14参照
 夕焼けは、夕方太陽の高度が低いときに太陽からの白色光が地平線すれすれに地球の大気を長い距離通過する間に大気中に含まれる窒素分子や酸素分子等の微粒子によって波長の短い紫、青、緑等の光が強く散乱されるために透過光がオレンジ色になる現象である。それに対して青空は太陽の高度が高い昼間、大気を短い距離通過する間に波長の短い紫や青の光が強く散乱されて起きる現象である。以上のことをこの実験装置を用いて説明するときは以下のように行なう。スクリーン上の連続スペクトルの紫、青、緑の部分の光を裏が黒い工作用紙でカットし、残りの光を再合成するとスクリーン上の光のスポットはオレンジ色(夕焼け)になり、赤、橙、黄の部分の光をカットし、残りの光を再合成するとスクリーン上の光のスポットは青みを帯びた色(青空)になる。
(2)植物の葉が緑色に見えることを説明する実験
 植物の葉が緑色に見える理由は葉の中にある葉緑素(クロロフィル)が白色光の中の赤および青の光を特に強く吸収して光合成のエネルギー源として利用するためであるが、スクリーン上の連続スペクトルの赤および青の部分の光をカットし、残りの光を再合成するとスクリーン上の光のスポットは緑色を帯びた色(葉っぱの色)になる。
(3)色フィルターによる光の吸収の実験...写真15参照
連続スペクトルの一部をカットしてから再度混合することにより、自由にいろいろな色の光をつくることができる。赤、黄、緑、青のセロハンを透過した光のスペクトルを観察し、それを元にフレネルレンズ上で白色光の連続スペクトルの一部をカットすることによってほぼ同じ色の光をつくりだすことができる。
 例えば、青色のセロハンを透過した光のスペクトルを観察すると、白色光の連続スペクトルから赤と橙の光がカットされたものになっている(つまり、青色のセロハンを透過した光の単色性はあまりよくない)が、実際にフレネルレンズ上で白色光の連続スペクトルから赤と橙の光をカットし、残りの光をスクリーン上で再合成すると、スクリーン上の光のスポットの色は青色のセロハンを透過した光の色とほぼ同じである。
 それに対して、赤色のセロハンを透過した光のスペクトルは赤と橙のみであり、白色光の連続スペクトルから紫、藍、青、緑、黄の光がカットされている。(つまり、赤色のセロハンを透過した光の単色性はよい。)実際にフレネルレンズ上で白色光の連続スペクトルから紫、藍、青、緑、黄の光をカットし、残りの光をスクリーン上で再合成すると、スクリーン上の光のスポットの色は赤色のセロハンを透過した光の色とほぼ同じになる。
 また、セロハン等の色フィルターは連続スペクトルの一部を吸収し、残りの色の光を透過するものであることをさまざまな色のスペクトルを観察することを通して理解させることができた。例えば、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、緑色のセロハンを透過する光はなくなる。このことを赤色および緑色のセロハンを透過した光のスペクトルをもとに説明すると、赤色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には赤および橙のみが含まれている(つまり、黄、緑、青、藍、紫の光が吸収される)が、緑色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には黄、緑、青のスペクトルが含まれている(つまり、赤、橙、藍、紫の光が吸収される)。従って、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、赤色のセロハンを透過した赤、橙の光は緑色のセロハンに吸収されてしまい、この2枚のセロハンを透過する光はなくなる。
 以上のように、セロハン等の色フィルターを透過した光は単色光にはほど遠いものであり、いろいろな色の光を含んでいる。それに対してレーザー光は単色光である。そのことを確かめるためにレーザーポインター固定用の台の穴の中にレーザーポインターを入れ、レーザー光のスペクトルをフレネルレンズ上で観察すると非常にスペクトルの幅が狭く、ほとんど点であることが分かる。
(4)白色光の連続スペクトルから人工的な色をつくる実験...写真16参照
白色光の連続スペクトルの中に含まれていない色を人工的につくることができる。色フィルターによる光の吸収の特殊な例として、赤紫色のプラスチック板を透過した光のスペクトルは連続スペクトルの中の両端に位置する赤および紫である。つまり、赤紫色の光は自然の光の中には存在しない(連続スペクトルの中に含まれる単色光ではない)人工的な光であるといえる。実際に連続スペクトルの中の赤と紫以外の光をすべてカットするとスクリーン上に赤紫色の光のスポットができる。
(5)色の三原色に関する実験...写真17参照
 フレネルレンズ上の連続スペクトルの赤、緑、青の位置に幅約1cmの縦長の窓を開けた工作用紙を当てて、赤、緑、青の単色光を取り出してスクリーン上で再合成すると、光のスポットの色は白色になる。この状態で工作用紙の赤の部分を塞ぐと、スクリーン上の光のスポットの色はシアンになる。また、同様に緑の部分を塞ぐとマゼンタ、青の部分を塞ぐとイエローになる。また、スクリーンをフレネルレンズのすぐ裏側の位置に移動し、徐々に元の位置に戻していくと、スクリーン上では青のスポットと緑のスポットが重なってシアンとなり、それにさらに赤のスポットが重なって白になる様子がよく分かる。
(6)補色の実験...写真18参照
 フレネルレンズ上の連続スペクトルの赤および青緑の位置に縦長の窓を開けた工作用紙を当てて、赤および青緑の単色光を取り出しスクリーン上で再合成すると、光のスポットの色は白色になる。なお、写真18に示すように青緑の光を少し弱くするためにOHPフィルムに黒マジックを少し塗ったものを用いた。
(7)単色光の波長と回折縞の間隔の関係を示す実験...写真19参照
幅1cmの縦長の窓を開けた裏が黒い工作用紙をフレネルレンズ上の連続スペクトルに当てて単色光を取り出し、フレネルレンズの裏側に当てたホログラムシートに入射させると、スクリーン上に等間隔に並んだ回折縞が観察される。この状態で工作用紙を水平にずらしていくと、単色光の波長が連続的に変化するためスクリーン上の回折縞の色が変わるとともに間隔も変化する。











3−1.学習指導における実績
(1)白色光の中には赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化するいろいろな色の光が含まれていること、および、この連続スペクトルを再度集めると元の白色光に戻ることを実験を通して理解させることができた。
(2)セロハン等の色フィルターは連続スペクトルの一部を吸収し、残りの色の光を透過するものであることをさまざまな色のスペクトルを観察することを通して理解させることができた。
(3)セロハン等の色フィルターを透過した光は単色光にはほど遠いものであり、いろいろな色の光を含んでいる。それに対してレーザー光は単色光である。そのことをフレネルレンズ上のスペクトルを観察することで理解させることができた。
(4)
















3−2.学習指導における教育上の成果
(1)白色光の中には赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化するいろいろな色の光が含まれていること、および、この連続スペクトルを再度集めると元の白色光に戻ることを実験を通して理解させることができた。
(2)セロハン等の色フィルターは連続スペクトルの一部を吸収し、残りの色の光を透過するものであることをさまざまな色のスペクトルを観察することを通して理解させることができた。例えば、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、緑色のセロハンを透過する光はなくなる。このことを赤色および緑色のセロハンを透過した光のスペクトルをもとに説明すると、赤色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には赤および橙のみが含まれている(つまり、黄、緑、青、藍、紫の光が吸収される)が、緑色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には黄、緑、青のスペクトルが含まれている(つまり、赤、橙、藍、紫の光が吸収される)。従って、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、赤色のセロハンを透過した赤、橙の光は緑色のセロハンに吸収されてしまい、この2枚のセロハンを透過する光はなくなる。
(3)セロハン等の色フィルターを透過した光は単色光にはほど遠いものであり、いろいろな色の光を含んでいる。それに対してレーザー光は単色光である。そのことをフレネルレンズ上のスペクトルを観察することで理解させることができた。
(4)


(7)生徒の意見から
 実験終了後、今後の参考のため実験についての感想を書かせたところ、「色の仕組みが分かったような気がする。」、「光を自由に料理するようで面白かった。」、「光の回折縞の間隔が波長によって変化するのがよく分かった。」、「これからもいろいろな実験を見せてほしい。」等、好意的なものがほとんどであった。
(8)まとめ
 光の色について分かりやすく演示する印象深い実験であるため、生徒に光に対する興味を持たせることができると同時に、実験を通して光の波長と光の性質に関する基本的な内容を理解させることができた。

(8)回折角と光の波長について θ...回折角 λ...光の波長 
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・ θ ・λ[nm]・ θ ・λ[nm]・ θ ・λ[nm]・ θ ・λ[nm]・
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・11°・ 211 ・21°・ 396 ・31°・ 569 ・41°・ 725 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・12°・ 230 ・22°・ 414 ・32°・ 586 ・42°・ 739 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・13°・ 249 ・23°・ 432 ・33°・ 602 ・43°・ 753 ・
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・14°・ 267 ・24°・ 449 ・34°・ 618 ・44°・ 768 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・15°・ 286 ・25°・ 467 ・35°・ 634 ・45°・ 781 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・16°・ 305 ・26°・ 484 ・36°・ 649 ・46°・ 795 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・17°・ 323 ・27°・ 502 ・37°・ 665 ・47°・ 808 ・
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・18°・ 341 ・28°・ 519 ・38°・ 680 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・19°・ 360 ・29°・ 536 ・39°・ 695 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・20°・ 378 ・30°・ 552 ・40°・ 710 ・
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                                 2011.3.21.発行
第103回秦野物理サークル報告

日時:2011年1月22日(土)14:00〜17:00
場所:伊勢原子ども科学館
参加者:稲葉一弘(伊勢原子ども科学館)、岩瀬充璋(神奈川大学)、倉田慎一(教育センター)、志村潤子((株)ナリカ)、鈴木孝雄(一般)、塚本栄世(伊勢原高校)、茂泉俊夫(綾瀬西高校)
                                  計7名

【1】発表項目
(1)物質の混合(倉田慎一)...写真1〜写真3参照
(2)Ag+の検出(倉田慎一)...写真4、写真5参照
(3)無重量状態を示す実験(稲葉一弘)...写真6参照
(4)数字を読み取る科学マジック(稲葉一弘)...写真7〜写真13参照
(5)「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」(茂泉俊夫)...写真14、写真15参照
(6)虹について(鈴木孝雄)...図1、図2、写真16、写真17参照
(7)ガラスコップがころがる往復運動の周期測定(塚本栄世)...写真18参照
(8)006−Pを電源としたイオンの移動を色の変化で示す実験(塚本栄世)
   ...写真19〜写真21参照
(9)簡易分光器の反射型回折格子としてのBD、DVD、CDの比較(塚本栄世)
   ...資料1、写真22〜写真25参照

【2】発表内容
(1)物質の混合(倉田慎一)...写真1〜写真3参照
 「物質の混合」の実験に使用された市販の玩具は、直径5〜6cm程度の透明なプラスチック球殻2個を長さ5cm、直径7〜8mm程度の透明プラスチック・パイプでつないだ構造で、その中には直径5mm程度のオレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球が多数入っています(写真1参照)。遊び方は、玩具全体を揺さぶったり傾けたりしながら根気よくオレンジ色の球と青色の球を2個の球殻の間で移動させて、片側に同じ色の球を寄せてしまうという遊びです(例えば、左側の球殻にオレンジ色の球、右側の球殻に青色の球を集めます)。もちろん、意識的に操作しないで、全体を乱雑にゆすったり傾けたりするだけではどちらの球殻にもオレンジ色の球と青色の球が混ざって入ります。つまり、コーヒーと牛乳を混ぜてコーヒー牛乳をつくると、そのコーヒーと牛乳がいつの間にか元のコーヒーと牛乳に分かれてしまうという現象が起きないのと同じです。エントロピー増大の原理から言って、エントロピーが大きいコーヒーと牛乳が混ざった状態の方がエントロピーが小さいコーヒーと牛乳に分かれた状態より実現される確率が圧倒的に大きいということです。
 この玩具の球殻の1つにドリルで穴を開け、その穴から球殻の中に入っているオレンジ色の球と青色の球をいったん全部外に出してしまい、次に、オレンジ色の球2個と青色の球2個を球殻に開けた穴から入れてその穴をゴム栓で塞いでしまいます。つまり、オレンジ色の球2個と青色の球2個だけが入った新しい玩具ができ上がったことになります(写真2参照)。この玩具を片方の球殻以外の部分を布製の袋に入れて(写真3参照)、操作が作為的にならないように、中が見えないようにしてから、乱雑に揺らして袋の外に出ている球殻の中に2個の球が入ったときのオレンジ色の球と青色の球の組み合わせを測定します。計算をしてみるとすぐに分かりますが、1つの球殻に入る2個の球が同じ色になる確率は1/3になります。ところが、実際にやってみると、1つの球殻に入る2個の球が同じ色になる確率は1/5になったそうです。その原因はどうも静電気らしいのですが、実験を何度も繰り返すうちに、オレンジ色のプラスチック球どうしや青色のプラスチック球どうしの間では斥力がはたらき、オレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球との間では引力がはたらくようになるとのこと。このように帯電するのは、プラスチック製の透明球殻とオレンジ色や青色のプラスチック球との摩擦によって帯電するのか。オレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球との摩擦によって帯電するのかははっきりしないようです。プラスチック製の球殻やオレンジ色や青色のプラスチック球がどのような種類のプラスチックであるかが不明であり、オレンジ色や青色のプラスチック球に入っている添加物の違いによってオレンジ色のプラスチック球と青色のプラスチック球の帯電の違いが生じている可能性もあるとのこと。
 今後、この実験は工夫次第でエントロピー増大の原理を体験するための貴重な実験に発展させることができるかもしれません。
(2)Ag+の検出(倉田慎一)...写真4、写真5参照
 トイレの掃除に使う銀イオンAg+の入ったティッシュペーパーのようなものが市販されています。そのパッケージには、「流せるトイレクリーナー アルコールと銀イオンのW除菌 30枚入」と書かれています(写真4参照)。これをAg+の検出に使えないかと思い、このペーパーを食塩水に浸してから発泡スチロール製の皿に入れ(写真5参照)、太陽光が当たる場所に放置しておくと、黒い小さなしみのようなものがポチポチと現れたとのことです。この黒い物質はトイレクリーナーに入っているAg+と食塩水の中に含まれるCl−が反応して塩化銀AgClとなり、さらにこのAgClから太陽光の中に含まれている紫外線の作用によって銀Agが遊離するために黒いしみが生じると考えられます。
 例会でも同じ実験を行ないましたが、室内であったためにAgClから銀Agが遊離する反応が起きなかったらしく、黒い小さなしみはできませんでした。後日、太陽の光が当たる場所で再度同じ実験をやってみたいものです。
(3)無重量状態を示す実験(稲葉一弘)...写真6参照
 関西にある科学サークルであるOnsen(Online Natural Science Education Network オンライン自然科学教育ネットワーク)の例会に参加した際に、教えてもらった実験の1つだそうです。長さ5cm、直径1.3cmのフタつきの透明なプラスチック製容器の中に空気の泡が1個だけ残るようにして水を入れ、フタを閉めます。この容器が目の前にくるように手で持って、そのままの状態で容器の中の泡に注目しながらジャンプします。ジャンプした人の体が空中にある間は一種の無重量状態になっているので水中の泡は一ヶ所にとどまったままです。エレベーターをぶら下げているロープを切断すると、エレベーターが地面に激突するまでの短い時間はエレベーター内部で一種の無重量状態が実現できるということと同じだと思われます。手軽に無重量状態を体験することができる実験です。
(4)数字を読み取る科学マジック(稲葉一弘)...写真7〜写真13参照
 この実験もOnsenの例会で教えてもらった実験だそうです。まず、お客さんに白い紙(パソコンのプリンター用紙でよい、この紙を「紙A」と名づける)を渡し、その紙に黒マジックで一桁の数字を書いてもらい、外から見えないようにすぐその場で二つ折りにした黒いラシャ紙にその紙を挟んでもらいます(写真7参照)。それを受け取ったマジシャンが、その上から文字を書くためのもう一枚の白い紙(この紙を「紙B」と名づける)を載せてから、自分の頭にかざして「念」を入れ(写真8参照)、紙Bと黒いラシャ紙を通して紙Aに書かれた数字を透視(?)しながら、その透視した数字の上から紙Bに黒マジックで数字を書きます(写真9参照)。この数字をお客さんに見せると自分が書いた数字とぴったり一致している(写真10参照)ので、びっくりします。このマジックを例会で初めて見せてもらったわれわれも、どのような仕組みでこんなことができるのか検討がつかず、びっくりしました。
 マジックは本来種明かしはしないものですが、例会では以下のようにすぐに種明かしをしてもらいました。ポイントはこのマジックに使う紙Bにあります。実は、紙Bは熱転写式のFAX用紙(写真11参照)で、黒マジックのインクから出る揮発性成分(この揮発性成分は黒いラシャ紙を通過します)によって紙Bに数字の形に薄い色がつきます(写真12、写真13参照)。この薄い色がついた部分を黒マジックでなぞれば数字を書くことになります。黒マジックでなぞるのは、紙Bに揮発性成分によって数字の形に薄い色がついていることを隠す意味もあります。このことを確かめるため、黒マジックをペン先を上にしてフタを取り、その上に紙Bを置いて色がつくかどうか試したところ、色がつくことはありませんでした。それに対して、紙Bの上にペン先を下にしてフタを取った黒マジックを近づけると、薄く色がつきました。(この結果から、揮発性成分は空気より比重が大きい物質であると考えられます。インターネットで調べた結果、揮発性成分は分子量106のキシレンC8H10等が含まれているようです。)また、紙Aに黒マジックで数字を書き、その直後に紙Bを押し当てると、数字の形にうすく色がつきますが、それに対して、黒マジックで数字を書いてから時間がたってしまうと紙Bを押し当てても数字の形にうすく色がつくことはありません。また、紙Bに表と裏があり、押し当てる面が逆のときはうまくいきません。
 なお、この科学マジックを考えた数学の先生はこのマジックの特許も取られたそうです。
(5)「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」(茂泉俊夫)...写真14、写真15参照
 年に2回実施している理科部会物理実験実習委員会主催の物理実験器具製作会で今後製作する予定の「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」が紹介されました。従来、科学まつり等のイベントで製作されていたプラコップ スピーカーは、透明なプラコップに太さ0.4mm程度のエナメル線を適当な回数(10〜20回程度か?)巻いた直径20mm程度の円形コイルをセロテープでプラコップの底(外側)に貼り付け、そのコイルをラジカセやCDプレイヤー等(ちょっと古いか?)の出力端子に接続してボリウムを最大にして音楽の信号を流し、コイルの近くにフェライト磁石を近づけると、コイルを貼り付けたプラコップが音楽にあわせて振動するため、プラコップから音楽が聞こえるというものでした。本来、コイルを作るためのエナメル線はできるだけ軽くまた電気抵抗が小さい方がよく、また磁石は磁力が強く、小型であることが理想です。ただ、安価で入手しやすい材料で製作することを考えると、なかなか感度のいい手作りスピーカーを作ることは難しいことでした。ところが、最近フェライト磁石に比べて格段に強烈なネオジム磁石の値段が下がり、100円ショップで直径5mm程度のネオジム磁石が4個100円で入手できるようになり、この磁石を使うことでプラコップ スピーカーの感度がかなりよくなりました(写真14参照)。
 今回紹介された「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」では、さらにコイルを直径0.12mmという非常に細いエナメル線を使うことによって従来のものに比べて格段に軽量化しています(写真15参照)。従って、感度が抜群によい「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」が誕生しました。ただ、エナメル線が細いために電気抵抗が大きく、そのことが悪さをするのか、コイルの巻数を余り多くするとかえって感度が下がるそうで、コイルの巻数の最適値は15回だそうです。なお、直径0.12mmエナメル線は1kgあたり4,200円と高いのが難点です。プラコップ スピーカーを多数製作するのでなければ、何校かが共同でこのエナメル線を入手するとよさそうです。
 なお、例会ではこのような細いエナメル線は時計のムーブメントの部分に大量に使われているとの指摘がありました。そのような時計が廃棄されることがあれば、細いエナメル線をタダで手に入れるチャンスです。「ハイクオリティー プラコップ スピーカー」を例会でも製作してみたいものです。

(6)虹について(鈴木孝雄)...図1、図2、写真16、写真17参照
 まず、虹が生じる仕組みを振り返ってみましょう。(図1)のようにA点で水滴に入射した太陽光が水滴と空気の境界面で屈折し、次にB点で水滴から水滴の裏側の空気中に光のエネルギーの大部分が出ていく際、一部の光のエネルギーが反射し、C点で水滴から空気中に光が出ていくときに再度屈折します。A点とC点(つまり、水滴と空気の境界面)で光が屈折するときには光の波長によって屈折率が異なる「光の分散」の現象が起きるため、光の波長によって屈折角がわずかずつ異なります。光の波長が異なると光の色が異なるため、C点で水滴から空気中へ出ていく光の角度が光の色によって違ってきます。そのため、水滴から観測者に向かう光が角度によって異なる色に色づいて見え、外側から順に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と七色(実際には連続スペクトル)に色づく虹の現象が観察されます。このとき、水滴への入射光と水滴で屈折→反射→屈折を起こして観測者に向かう光のなす角度θは光の波長によって異なりますが、ほぼ41°であり、この角度θは水滴の大きさに無関係です。この性質に注目して、身近な材料を使って虹を観察する工夫が紹介されました。
 そのポイントは、水滴の役割をするものとして、断面の形が円形であるペットボトル(発泡性飲料用)を使用したことです。虹の原理を実験によって理解することに目的を絞れば、水滴の役割をするものは球形である必要はなく、光の屈折率が空気より大きい円柱形の物体であっても構いません。具体的な方法は、(図2)のように、太陽光の役割をするクリア電球と水を入れたペットボトルを配置します(写真16参照)。このとき、ペットボトルは鉛直にして目の前に立てた状態で使用します。ペットボトルの光を入射させた側と反対側の端を見ると、その位置に水平方向に色が変化する連続スペクトルが見えます。ただし、スクリーンを使わなければ、観察する角度によって色の異なる単色光を観察することになりますが、乳白色のビニール袋をこの位置に置くと、このビニール袋がスクリーンの役割をして連続スペクトル全体が観察されます(写真17参照)。このとき、ペットボトルに光が入射するA点付近にものを置いて光を遮ると、連続スペクトルは消えてしまいます。なお、太陽光の役割をする光源としてクリア電球(電球の外側のガラス部分が乳白色のすりガラスではなく、透明ガラスが使用されていて、外からフィラメントが直接見えるタイプのもの)を使用しています。光源のフィラメントは点光源とみなせるような小さいものが理想ですが、このクリア電球のフィラメントはかなり小さいので、実用上は問題がありません。
(7)ガラスコップがころがる往復運動の周期測定(塚本栄世)...写真18参照
前回の例会で紹介された「ころがる(鈴木孝雄)」の追試です。ガラスコップ(直径  cm、高さ  cm、質量  g)を横にして側面が接するように机の上に置き、そっところがすと、30〜40cmころがった後、一瞬静止してから逆向きに引き返してきて、再度一瞬静止してから元の運動の向きにころがり、...という往復運動が起きます。このころがりの往復運動は結構長い時間続き、振幅が小さくなりながら5〜6回以上往復運動します。なぜこのような往復運動が起きるのか、現時点では不明ですが、その仕組みを探るため、ガラスコップだけの場合とガラスコップの内側に質量 gのボルトを貼り付けた場合について、往復運動の振動周期を測定しました。その結果は、ガラスコップだけの場合は4.0[s]、ガラスコップの内側にボルトを貼り付けた場合は2.4[s]でした。
 前回の例会でも指摘されていたように、厚さおよび材質が一様で断面が理想的な円形をしたパイプをころがせばこのような現象が起きるはずがなく、少しころがってから静止してしまうだろうと予想されます。また、ペットボトルを輪切りにしたものの内側に意図的に軽いおもりを貼り付けて机の上でころがすと、おもりを貼り付けてないものに比べて往復運動の周期が短くなる現象も前回の例会で紹介されており、従って、逆に考えると、対称性のいいものほど往復運動の周期が長くなると予想されます。今回は、ガラスコップとボルトを使って前回の例会で紹介された実験を追試した訳ですが、今後理論的な計算によってこの現象についての解析を進めていきたいものです。
(8)006−Pを電源としたイオンの移動を色の変化で示す実験(塚本栄世)
 ...写真19〜写真21参照
 まず、顕微鏡用のスライドガラスや超透明テープを二つ折りにしたものの上に青色リトマス試験紙を載せ、そのリトマス試験紙を飽和食塩水で濡らして電流が流れやすい状態にします。次に、そのリトマス試験紙の両端を目玉クリップで挟んでからリトマス試験紙の中央部にスポイトで酸を滴下し、リトマス試験紙の両端に電圧をかけると、酸に含まれる水素イオンH+の移動によって、青色リトマス試験紙が酸のはたらきでピンク色に変化する領域が徐々に−側に移動していく現象が起きます。実際にこの実験をやってみると、リトマス試験紙の両端を挟んでいる目玉クリップの間に何Vの電圧をかけるかが問題で、電圧が低い場合は時間がかかりすぎて授業時間内に色の変化を見せることができないと同時に、迫力不足です。やはり、見る見るうちに色が変わっていくようでないと実験の迫力がありません。つまり、電圧をかけるために使用する電源が問題で、できれば連続的に電圧を変えることができる電源が理想ですが、高校の現場では充分高い直流電圧(例えば、100V)を発生することができる直流電源はありません。そこで、市販されている006−P(9V)を直列接続して直流電源として使用して実験してみました。
 例会では、006−Pを10本直列接続(計90Vの電圧になる)し、0.1mol/Lの塩酸に浸した木綿糸をリトマス試験紙の中央部に長さ方向と直角方向に置くと、徐々に元の水色からピンク色に変色する領域が広がって行くのを観察する実験(写真19参照)を行いました。例会の2〜3日前に同様の実験を行なったときと比べ、リトマス試験紙が変色する速さが遅いので、0.2mol/Lの塩酸を使い、また、リトマス試験紙の中央部に置く酸の量を増やすために木綿糸の替わりにろ紙を幅2mm程度の短冊に切ったものを使用して同様の実験を行なった(写真20参照)ところ、リトマス試験紙の色が水色からピンク色に変色する速さが少し速くなりました。しかし、例会の2〜3日前に実験を行なったときと比べ、リトマス試験紙が変色する速さが遅いのは明らかで、何度も実験を繰り返すうちに006−Pの電圧が下がってきたのかもしれません。
 例会では、以下のような指摘がありました。
@電池の電圧が低下しないようにするために、回路には必ずスイッチを入れる必要がある。スイッチを押している間だけ回路に電流が流れるようにしないと、すぐ乾電池(006−P)の電圧が下がってしまう。
A青色リトマス試験紙の中央部に置く酸の濃度をもっと上げた方がよい。
B青色リトマス試験紙の中央部に置く酸を含んだ木綿糸は酸を含む量が少ないので、ろ紙を短冊に切ったものを使用した方がよい。
C観察する対象が小さいので、ビデオカメラと液晶プロジェクター等を利用して実験を拡大して見せる工夫が必要である。
D食塩水を浸したろ紙の上に過マンガン酸カリウムの結晶の小片を置いて、電圧をかける実験をやるとよい。





(9)簡易分光器の反射型回折格子としてのBD、DVD、CDの比較(塚本栄世)
 ...資料1、写真22〜写真25参照
 第101回例会(2010.9.25.(土)実施済)で紹介されたDVD−Rを熱で45°の角度に切ったものを反射型回折格子として使用した簡易分光器を裏が黒い工作用紙を使って3台製作し(写真22参照)、分光器の中に入れる反射型回折格子としてCD―Rを使用した場合、DVD−Rを使用した場合、BD(ブルーレイ・ディスク)を使用した場合の3通りの場合についてその観察されるスペクトルを比較しました。まず、CD―R、DVD−R、BDの情報を記録する面の外観を比較すると、(写真23)のように、BDは真っ黒です(写真では上から順にCD―R、DVD−R、BDです)。今回、裏が黒い工作用紙を使って製作した簡易分光器は幅6cm、高さ17cm、おくゆき23cmの直方体の箱で、箱の上面で後から8cmの位置に横幅3cmの単スリット(スリット幅は約1mm)を作り、その上から乳白色のトレーシングペーパーをセロテープで貼り付け、その真下に下から2.5cmの高さの位置に熱で中心角45°の角度に切ったDVD−R等を反射型回折格子として竹串を使って固定します。反射型回折格子を箱に固定する具体的な方法は、中心角45°の角度に切ったDVD−R等を両面テープでペットボトルのフタの上面に固定し、さらにそのペットボトルのフタの側面にドリルで穴を開けて、その穴に竹串を通します。この竹串を箱の内側から箱の外に向かって突き通すことで、DVD−R等で作った反射型回折格子を箱に固定し、さらに輪ゴムを箱の後ろ側を通して箱の両側に突き出した竹串に引っ掛けるようにして、輪ゴムと箱との摩擦によって反射型回折格子を任意の位置で固定することができるように工夫してあります。DVD−Rを反射型回折格子として使った簡易分光器で、箱の上部の単スリット(乳白色のトレーシングペーパーをその上に貼り付けてある)の上に電球型蛍光灯(Nationalパルックボール EFT14EDG、14W...白熱球60W相当の明るさ、三波長型昼光色、パルックday色、全光束750ルーメン)を置いて(写真24参照)、簡易分光器前面の覗き窓から反射型回折格子を見ると、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫色の連続スペクトルと何本かの線スペクトルが見えます(写真25参照)。このとき、竹串を持ってゆっくり回転させると、1次の回折光と2次の回折光の一部が見えます。それに対して、CD―Rを反射型回折格子として使用した場合は、1次、2次、3次の回折光が観察され、また、2次と3次の回折光の一部が重なっています(詳細は資料1参照)。さらに、BD(ブルーレイ・ディスク)を反射型回折格子として使用した場合は、回折光が一切観察されません。BDのトラックピッチが0.32μmであるため、(資料1)に示すように、可視光の範囲内では回折光が存在しません。つまり、肉眼で見ても真っ黒に見えるBDは可視光に対して反射型回折格子としてはたらかないようです。つまり、BDを使って簡易分光器を製作することはできません。従って、現時点ではDVD−Rを反射型回折格子として簡易分光器を作るのが一番いいようです。
【参考】CD、DVD、BDのトラックピッチ、データを記録するレーザー光の波長、データ容量の比較
@トラックピッチdの比較
 CD ... d=1.60μm(=1600nm)
 DVD ... d=0.74μm(=740nm)
 BD ... d=0.32μm(=320nm)
Aデータを記録するレーザー光の波長λの比較
 CD ... λ=780nm(赤外光)
 DVD ... λ=650nm(赤色光)
 BD ... λ=405nm(青色光 ... 紫色
 光?)
Bデータ容量mの比較
 CD ... m=0.7GB
 DVD ... m=4.7GB
 BD ... m=25GB(2層の場合は50G
 B)

【3】会費について
今年度は会費を集めません。

【4】連絡先について
〒259−1142 神奈川県伊勢原市田中1008−3
神奈川県立伊勢原高等学校 塚本栄世
TEL:0463−95−2578    
FAX:0463−96−2558    

【5】次回例会(第104回秦野物理サークル)について
3月26日(土) 14:00〜17:00
例会の会場は伊勢原子ども科学館です。
なお、来年度の例会日程は現時点では未定です。
    
                                  文責 塚本栄世



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1.申請内容の背景とねらい
【1】目的
 連続スペクトルの一部をカットし、再合成する光の実験によって光の色、および、波長の違いによる光の性質の違い等に関する一連の演示実験を行うこと。

【2】概要
 従来、光のスペクトルの観察は分光器を使って行なわれることが多かったが、この方法では生徒一人一人が交代で観察することになり、非常に能率が悪かった。また、色フィルターを次々代えながら光の吸収について説明するようなことはとてもできなかった。それに対して、スライドプロジェクターの白色光を単スリットを通して回折格子レプリカフィルムに入射させると、鮮明で大きな連続スペクトルを表示することができ、さらにそのスペクトルをフレネルレンズで集めることで光の再合成が可能となる。このような方法を使うと、授業の中で生徒全員が同じ光のスペクトルを同時に観察することができるので、印象深い光のスペクトルの実験を能率的に行なうことができる。また、2種類のスペクトルを同時に観察して、両者を比較しながら実験を進めていくことは重要なことであるが、回折格子レプリカフィルムによる左右の一次の回折光を使うとそのことを容易に実現できる。例えば、白色光を連続スペクトルに分解し、その一部をカットしてから再度混合することで、自由にいろいろな色の光をつくり出し、色フィルターによる光の吸収や、夕焼けがなぜ赤いか、青空がなぜ青いか、葉っぱはなぜ緑色か等の身近な色に関する生徒の疑問に答えると同時に、光の波長によって光の干渉や回折の現象にどのような差が出るかについて実験を通して答えることができる。







2.内容の説明
【1】教材・教具の製作方法について
1.製作に用いる材料
 回折格子レプリカフィルム((株)光洋、1mmあたり905本の溝)、フレネルレンズ(シートレンズU−5、A4サイズ、シンワ測定(株)、DIYの店で1,350円)、ホログラムシート(東急ハンズ、1mmあたり約200本の傷が直角方向につけられている回折格子シート)、裏が黒い工作用紙(クロワシ、4切)、色セロハン(赤、緑、青、黄)、スライドプロジェクター用のマウント、剃刀刃(0.1mm厚)、釣用の重り(コイン25号)、レーザーポイター(秋月電子通商、670nm、900円)
2.実験装置の製作
(1)スライドプロジェクター用のマウントに固定した単スリットの製作...写真1参照
 剃刀刃をペンチで割り、約1.2mmの隙間を開けてスライドプロジェクター用のマウントに黒のビニールテープで固定する。
(2)レーザーポインターを固定する台の製作...写真2参照
断面が25mm*40mm、長さ5cmの木の棒に木工ドリルを使って13.5φの貫通穴を開ける。この木片の左右から断面が30mm*40mm、長さ5cmの木の棒を木ネジで固定し、黒ペンキを塗って乾燥させてから、重り6個を両面テープで棒に貼りつける。この穴の中にレーザーポイターを挿入すると、レーザーポインター側面のボタンが押された状態になり、スイッチが押されたままになる。また、この台はスライドプロジェクターのレンズが下がらないように支持するはたらきもする。
(3)長方形の窓の開いた板を固定した冶具の製作...写真3参照
 スクリーン上の光のスポットの形を長方形にするために窓を開けた板をレンズの前の位置に固定するための冶具を製作する。写真3のように水ようかんの容器の底に適当な大きさの窓を開け、さらに縦28mm、横6mmの窓を開けた裏が黒い工作用紙を貼り付ける。この容器をL字金具を使って板に固定する。
(4)回折格子レプリカフィルムを固定した台の製作...写真4参照
厚さ3mmのベニヤ板を縦14cm、横10cmに切り、縦8.5cm、横6.0cmの窓を切り抜く。このベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ10cmの棒に固定する。さらに棒の裏側に縦14cm、横1.5cmのベニヤ板を木ネジで固定する。(このベニヤ板は直進する白色光を遮るはたらきをする。)次に、黒ペンキを塗って乾燥させ、窓の部分に回折格子レプリカフィルムをセロテープで固定する。(回折格子レプリカフィルムに刻まれた溝が縦になるように固定する。)最後に重り3個を両面テープで棒に貼りつける。
(5)フレネルレンズを固定した台の製作...写真5参照
厚さ3mmのベニヤ板を縦25cm、横32cmに切り、縦20cm、横27cmの窓を切り抜く。このベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ32cmの棒に固定する。次に、黒ペンキを塗って乾燥させ、窓の部分にフレネルレンズをセロテープで固定する。さらにその上から縦18cm、横24cmの窓を切り抜いた裏が黒い工作用紙(縦25cm、横32cm)をセロテープで固定する。次に、スペクトル観察用の板目紙2枚(縦4cm、横32cmのものと縦8cm、横32cmのもの)を工作用紙に貼り付ける。最後に重り3個を両面テープで棒に貼りつける。このようなものを2個製作する。
(6)スクリーンの製作...写真6参照
 表面に白ペンキを塗った縦26cm、横35cmのベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ35cmの棒に固定する。次に、重り3個を両面テープで棒に貼りつける。このようなものを2個製作する。
(7)焦点距離調節用のスクリーンの製作
 表面に白ペンキを塗った縦26cm、横17cmのベニヤ板を木ネジで断面が25mm*40mm、長さ17cmの棒に固定する。次に、重り3個を両面テープで棒に貼りつける。
(8)スクリーン用の棒の製作...写真6参照
2個のスクリーンを置く位置の間隔が机の幅より少し大きいため、長さ1.4mの棒(断面は4cm*2.5cm)を使う。なお、棒の上には釣り用の重り5個を両面テープで貼りつける。
(9)実験装置の位置決め用の台紙の製作...写真7参照
白い大きな紙を実験台の上に置き、その上にスライドプロジェクター、レーザーポインター固定用の台、回折格子レプリカフィルムを固定した台、フレネルレンズを固定した台、スクリーン用の棒、スクリーンを正しい位置に置いて、その位置を紙の上に印をつけて記録する。また、分度器を拡大コピーしたものをその台紙の上に貼り、回折格子レプリカフィルムに入射した光の回折した角度および光の波長を示すために利用する。なお、回折した角度から光の波長を計算する際にはdsinθ=nλの式を使う。
(10)裏が黒い工作用紙を用いた各種の実験用台紙の製作...写真8参照
裏が黒い工作用紙をフレネルレンズを固定した台と同じ大きさ、形に切ったものを製作し、その工作用紙から光を通過させるための長方形の窓を切りとった各種の実験用台紙を製作する。
(11)各種フィルターの製作...写真9参照
 写真のように色セロハン、色の付いたプラスチック板、ゼラチンフィルター等の各種フィルターを作る。
 
【2】実験方法
1.実験前の調整
(1)スライドプロジェクターのスライダーにマウントに固定した単スリットを入れ、光が単スリットを通る状態にする。
(2)実験装置の位置決め用の台紙を実験台の上に置いて、セロテープで固定する。
(3)台紙につけた印に合わせてスライドプロジェクター、フレネルレンズを固定した台、スクリーン用の棒、スクリーンを正しい位置に置く。...写真10参照
(4)窓の開いた板を固定した冶具をスライドプロジェクターのレンズの前にセットする。(この冶具の板の部分をスライドプロジェクターの上に載せ、その上に重りを4個載せて固定する。)この冶具をつけないとスクリーン上の光のスポットにスライドプロジェクターのコイルの形が映ってしまうが、この冶具を付けることで、コイルの一部だけを見ることになり、スクリーン上の光のスポットが自然なものに見える。...写真11参照
(5)暗幕を閉めて、実験室を暗くする。
(6)スライドプロジェクターのスイッチを入れ、そのレンズを出し入れしてフレネルレンズと同じ距離で正面に置いた焦点距離調節用のスクリーンの上に単スリットの像が鮮明に映るようにする。この状態でピントがあっていることになる。
(7)レンズの下にレーザーポインター固定用の台を入れ、レンズが下がらないようにする。...写真11参照
(8)回折格子レプリカフィルムを固定した台を正しい位置に置く。...写真12参照
(9)左右のスクリーンの位置を微調整し、スクリーン上の光のスポットが白色になるようにする。
2.白色光を連続スペクトルに分解する実験...写真13参照
 スライドプロジェクターの白色光を単スリットを通して回折格子レプリカフィルムに垂直に入射させ、その一次の回折光をフレネルレンズを固定した台に映すと、赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化する非常にきれいな連続スペクトルが観察される。この連続スペクトルの光をフレネルレンズで集めると、スクリーン上に白色の光のスポットが観察される。つまり、白色光の中には赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化するいろいろな色の光が含まれていること、および、このいろいろな色の光を再度集めると元の白色光に戻ることが分かる。
3.白色光の連続スペクトルの一部をカットし、再合成する実験
(1)夕焼け、青空についての実験...写真14参照
 夕焼けは、夕方太陽の高度が低いときに太陽からの白色光が地平線すれすれに地球の大気を長い距離通過する間に大気中に含まれる窒素分子や酸素分子等の微粒子によって波長の短い紫、青、緑等の光が強く散乱されるために透過光がオレンジ色になる現象である。それに対して青空は太陽の高度が高い昼間、大気を短い距離通過する間に波長の短い紫や青の光が強く散乱されて起きる現象である。以上のことをこの実験装置を用いて説明するときは以下のように行なう。スクリーン上の連続スペクトルの紫、青、緑の部分の光を裏が黒い工作用紙でカットし、残りの光を再合成するとスクリーン上の光のスポットはオレンジ色(夕焼け)になり、赤、橙、黄の部分の光をカットし、残りの光を再合成するとスクリーン上の光のスポットは青みを帯びた色(青空)になる。
(2)植物の葉が緑色に見えることを説明する実験
 植物の葉が緑色に見える理由は葉の中にある葉緑素(クロロフィル)が白色光の中の赤および青の光を特に強く吸収して光合成のエネルギー源として利用するためであるが、スクリーン上の連続スペクトルの赤および青の部分の光をカットし、残りの光を再合成するとスクリーン上の光のスポットは緑色を帯びた色(葉っぱの色)になる。
(3)色フィルターによる光の吸収の実験...写真15参照
連続スペクトルの一部をカットしてから再度混合することにより、自由にいろいろな色の光をつくることができる。赤、黄、緑、青のセロハンを透過した光のスペクトルを観察し、それを元にフレネルレンズ上で白色光の連続スペクトルの一部をカットすることによってほぼ同じ色の光をつくりだすことができる。
 例えば、青色のセロハンを透過した光のスペクトルを観察すると、白色光の連続スペクトルから赤と橙の光がカットされたものになっている(つまり、青色のセロハンを透過した光の単色性はあまりよくない)が、実際にフレネルレンズ上で白色光の連続スペクトルから赤と橙の光をカットし、残りの光をスクリーン上で再合成すると、スクリーン上の光のスポットの色は青色のセロハンを透過した光の色とほぼ同じである。
 それに対して、赤色のセロハンを透過した光のスペクトルは赤と橙のみであり、白色光の連続スペクトルから紫、藍、青、緑、黄の光がカットされている。(つまり、赤色のセロハンを透過した光の単色性はよい。)実際にフレネルレンズ上で白色光の連続スペクトルから紫、藍、青、緑、黄の光をカットし、残りの光をスクリーン上で再合成すると、スクリーン上の光のスポットの色は赤色のセロハンを透過した光の色とほぼ同じになる。
 また、セロハン等の色フィルターは連続スペクトルの一部を吸収し、残りの色の光を透過するものであることをさまざまな色のスペクトルを観察することを通して理解させることができた。例えば、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、緑色のセロハンを透過する光はなくなる。このことを赤色および緑色のセロハンを透過した光のスペクトルをもとに説明すると、赤色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には赤および橙のみが含まれている(つまり、黄、緑、青、藍、紫の光が吸収される)が、緑色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には黄、緑、青のスペクトルが含まれている(つまり、赤、橙、藍、紫の光が吸収される)。従って、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、赤色のセロハンを透過した赤、橙の光は緑色のセロハンに吸収されてしまい、この2枚のセロハンを透過する光はなくなる。
 以上のように、セロハン等の色フィルターを透過した光は単色光にはほど遠いものであり、いろいろな色の光を含んでいる。それに対してレーザー光は単色光である。そのことを確かめるためにレーザーポインター固定用の台の穴の中にレーザーポインターを入れ、レーザー光のスペクトルをフレネルレンズ上で観察すると非常にスペクトルの幅が狭く、ほとんど点であることが分かる。
(4)白色光の連続スペクトルから人工的な色をつくる実験...写真16参照
白色光の連続スペクトルの中に含まれていない色を人工的につくることができる。色フィルターによる光の吸収の特殊な例として、赤紫色のプラスチック板を透過した光のスペクトルは連続スペクトルの中の両端に位置する赤および紫である。つまり、赤紫色の光は自然の光の中には存在しない(連続スペクトルの中に含まれる単色光ではない)人工的な光であるといえる。実際に連続スペクトルの中の赤と紫以外の光をすべてカットするとスクリーン上に赤紫色の光のスポットができる。
(5)色の三原色に関する実験...写真17参照
 フレネルレンズ上の連続スペクトルの赤、緑、青の位置に幅約1cmの縦長の窓を開けた工作用紙を当てて、赤、緑、青の単色光を取り出してスクリーン上で再合成すると、光のスポットの色は白色になる。この状態で工作用紙の赤の部分を塞ぐと、スクリーン上の光のスポットの色はシアンになる。また、同様に緑の部分を塞ぐとマゼンタ、青の部分を塞ぐとイエローになる。また、スクリーンをフレネルレンズのすぐ裏側の位置に移動し、徐々に元の位置に戻していくと、スクリーン上では青のスポットと緑のスポットが重なってシアンとなり、それにさらに赤のスポットが重なって白になる様子がよく分かる。
(6)補色の実験...写真18参照
 フレネルレンズ上の連続スペクトルの赤および青緑の位置に縦長の窓を開けた工作用紙を当てて、赤および青緑の単色光を取り出しスクリーン上で再合成すると、光のスポットの色は白色になる。なお、写真18に示すように青緑の光を少し弱くするためにOHPフィルムに黒マジックを少し塗ったものを用いた。
(7)単色光の波長と回折縞の間隔の関係を示す実験...写真19参照
幅1cmの縦長の窓を開けた裏が黒い工作用紙をフレネルレンズ上の連続スペクトルに当てて単色光を取り出し、フレネルレンズの裏側に当てたホログラムシートに入射させると、スクリーン上に等間隔に並んだ回折縞が観察される。この状態で工作用紙を水平にずらしていくと、単色光の波長が連続的に変化するためスクリーン上の回折縞の色が変わるとともに間隔も変化する。











3−1.学習指導における実績
(1)白色光の中には赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化するいろいろな色の光が含まれていること、および、この連続スペクトルを再度集めると元の白色光に戻ることを実験を通して理解させることができた。
(2)セロハン等の色フィルターは連続スペクトルの一部を吸収し、残りの色の光を透過するものであることをさまざまな色のスペクトルを観察することを通して理解させることができた。
(3)セロハン等の色フィルターを透過した光は単色光にはほど遠いものであり、いろいろな色の光を含んでいる。それに対してレーザー光は単色光である。そのことをフレネルレンズ上のスペクトルを観察することで理解させることができた。
(4)
















3−2.学習指導における教育上の成果
(1)白色光の中には赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と連続的に変化するいろいろな色の光が含まれていること、および、この連続スペクトルを再度集めると元の白色光に戻ることを実験を通して理解させることができた。
(2)セロハン等の色フィルターは連続スペクトルの一部を吸収し、残りの色の光を透過するものであることをさまざまな色のスペクトルを観察することを通して理解させることができた。例えば、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、緑色のセロハンを透過する光はなくなる。このことを赤色および緑色のセロハンを透過した光のスペクトルをもとに説明すると、赤色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には赤および橙のみが含まれている(つまり、黄、緑、青、藍、紫の光が吸収される)が、緑色のセロハンを透過した光のスペクトルの中には黄、緑、青のスペクトルが含まれている(つまり、赤、橙、藍、紫の光が吸収される)。従って、赤セロハンを透過した光を緑色のセロハンに入射させると、赤色のセロハンを透過した赤、橙の光は緑色のセロハンに吸収されてしまい、この2枚のセロハンを透過する光はなくなる。
(3)セロハン等の色フィルターを透過した光は単色光にはほど遠いものであり、いろいろな色の光を含んでいる。それに対してレーザー光は単色光である。そのことをフレネルレンズ上のスペクトルを観察することで理解させることができた。
(4)


(7)生徒の意見から
 実験終了後、今後の参考のため実験についての感想を書かせたところ、「色の仕組みが分かったような気がする。」、「光を自由に料理するようで面白かった。」、「光の回折縞の間隔が波長によって変化するのがよく分かった。」、「これからもいろいろな実験を見せてほしい。」等、好意的なものがほとんどであった。
(8)まとめ
 光の色について分かりやすく演示する印象深い実験であるため、生徒に光に対する興味を持たせることができると同時に、実験を通して光の波長と光の性質に関する基本的な内容を理解させることができた。

(8)回折角と光の波長について θ...回折角 λ...光の波長 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ θ ・λ[nm]・ θ ・λ[nm]・ θ ・λ[nm]・ θ ・λ[nm]・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・11°・ 211 ・21°・ 396 ・31°・ 569 ・41°・ 725 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・12°・ 230 ・22°・ 414 ・32°・ 586 ・42°・ 739 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・13°・ 249 ・23°・ 432 ・33°・ 602 ・43°・ 753 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・14°・ 267 ・24°・ 449 ・34°・ 618 ・44°・ 768 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・15°・ 286 ・25°・ 467 ・35°・ 634 ・45°・ 781 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・16°・ 305 ・26°・ 484 ・36°・ 649 ・46°・ 795 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・17°・ 323 ・27°・ 502 ・37°・ 665 ・47°・ 808 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・18°・ 341 ・28°・ 519 ・38°・ 680 ・
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・19°・ 360 ・29°・ 536 ・39°・ 695 ・
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・20°・ 378 ・30°・ 552 ・40°・ 710 ・
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